雪降る寒空の下(幻想譚 セタと男主) |
※注意 作者の妄想がかなり入ってます。 それでもOKと言う方はどうぞ! 外は雪が降っている、終焉へ向かう前の雪が。 今日はこっちに来て14日目、そろそろ15日目になる。 明日にはすべてが終わるのだろう。 「明日で最後……か」 やるべきことはほとんどした。後は神を倒すだけ……。 武器防具も大体そろい、自分自身も十分強い。 『神』を倒す準備なんて8日目には終わってた。 だが……どうしてだろう? 最後の日まで残っていたのは。 「はぁ」 することがなくなり、宿屋から出る。 「ん……少し寒いな」 雪の降る中、神の地へと向かっていた。 神のいるところ。 その平野に一人の竜人がいた。 座り込み遠くを眺めている竜人の戦士。 「セタ、寒くないのか?」 マントをつけている俺でも少し寒いぐらいなのだ。 セタは鎧だけなのだから、なお寒いだろうに。 俺の言葉に、セタはこっちを振り向かずに答えた。 「まあ、正直寒いな……」 予想通りの返答、俺はマントに手をかける。 「そうだろうな……っと」 そういってマントをセタにかけてやる、少し自分が寒いが……。 「ほら……何もないよりかはましだろ?」 「………………」 セタはうつむいて何も返してこない。 俺も隣に座り、雪が舞う風景に目を移す。 雪は好きなほうだった。 白くきれいな結晶。 だが今の雪は違う。 破滅を教えるアラーム。 「う……」 寒い、しかし仕方ない。マントはセタに貸している。 「おい」 横から声が聞こえる、振り向くと手招きをしているセタ。 「何だ? セタ。マントならいいぞ、俺は大丈夫だから」 少々やせ我慢入っているが……。 一度貸したものをすぐに返してもらうのは気が引ける。 「そうではなくてだな……その……」 そう言ってまたうつむくセタ。 「?」 俺がわけがわからない、と言う顔をしているとセタが口を開いた。 「一緒に入ればいいだろう?」 「お前体温低いぞ」 「仕方がないだろう、竜人なんだからな」 そう言ってそっぽを向くセタ。 今の状態はひとつのマントに二人が包まっている状態、確かに少しは寒さが和らぐ。 「そういやトカゲって体温調節が出来ないんだよな」 なんとなく思い出した、トカゲなどの仲間は周りの温度に体温が左右されるだとか何とか。 「!! 誰がトカゲだ!!」 俺の失言にセタはものすごく怒り出した。 その殺気、まさに神をも殺せるだろう。 「い、いや……すまん」 叩かれる……と思ったがそんなことはなく、一言謝ればその殺気は消えていった。 「ふん」 またそっぽを向く。 なんとなくトカゲを思い出しただけで決してセタのことを言ったわけでは無いのだけども……。 まあ、そう聞こえてしまうだろう。 「本当にすまん、俺が悪かった」 もう一度謝る。セタはこちら側を向き 「わかったなら、もういい」 と言って空を見上げ始めた。 俺も釣られて空を見る。 雪がちらちらと曇りの空から落ちてくる。 それは悲しげでもありそして―― 「綺麗だな……」 その言葉は俺ではなく、セタ。 「あぁ、そうだな」 気がつけば同意の言葉を出していた。 セタに目を移すと、なんだかセタが輝いているように見えた。 俺は明日でこの世界から消えるのだろう。 だから出来る限り脳裏に焼き付けておこう。 この雪降る空と、この竜人の戦士を。 end |
佐上良輔
2012/03/22(木) 05:22:13 公開 ■この作品の著作権は佐上良輔さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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