図書恋奮闘記(クリス×ユアン)
あの7月の一件から
半年近くたったある日。
私はいつものように西から
差し込む夕日の中で佇み、
図書委員の仕事に励む。

この時期になると
日が落ちるのが早くなり、
紅く焼けた夕日はより鋭く
部屋の中まで入って来る。

読書にふさわしい季節になってきた。

いわゆる「読書の秋」というやつである。
ほんわかした春に読むのも、
茹だる様な夏に読むのも、
凛とした冬に読むのも
一向に構わないのだがやはり読書には
この季節が有っているだろう。

そんな事を知ってか知らずか
黙々と本を読んでいる男が居る。
名前はユアン。

ここにいるよりかは路地裏で
不良たちと屯しているほうが
しっくりくるような風貌。

だが彼はここで楽しそうに
本を読んでいる。

他人事のように説明しているけど……
一応私のボーイフレンド。
正直実感は少ない。

恋人のように甘ったるい会話を
するわけでもない。
ただ昼食は二人で取るようにしている。



「だってさ、だってさ、
 女の子の方からデートに
 さそうのってちょっと
 おこがましくありませんか?」

「むしろそういうのは
 あいつから誘うべきものでしょ?
 なんでわざわざ私から誘わなく
 ちゃならないのよ!
 えっ?そこのところわかってるの?」


声には出さず、自問自答のオンパレード。
まぁ単純に照れくさくて恥ずかしいだけだけどね……

「おーい、
 チンチクリンのねえちゃん
 この本借りたい、」

「はにゃっ?
 ああ、ユアンか。
 すぐに終わらせるわ。」

ユアンがニヤニヤと
笑いながら終わるのを待っている。

私だってはにゃっ? 
位たまには言うわよ……

未だにこの瞬間には緊張してしまう。
ここでのやり取りがお互いを知る
きっかけになったのだから。

あのあと話すようになって
いろいろと聞いてみると
面白い事が分かった。

まず「図書カード」を
わざわざ預けた理由。
単純に名前を覚えて
もらいたかったようだ、

「はい、終わったわよ。
 しおりをはさんである所を見ると
 もう読み終わったんじゃないの?」

「今夜は二度読みっ!
 小説を読むときの基本でしょ!!」

普段はキツイ目つきをしている
ユアンが少年のようなキラキラ
した瞳になる。
この瞬間のユアンが一番………

ううん、何でもない。

「んでさ、
 明日の土曜日7時に中央広場に集合ね!」

「はぁ?一体何の事よ??」






「野暮な事聞くなよ、
 クリスとデートしたいんだよ。
 これ以上恥ずかしいこと言わせんな。」

ツンツンの髪だけじゃなく、
顔も紅くして図書室を去って行った。
私もつられて顔が赤くなった。
表情に出やすい奴め………



土曜の朝6時ごろ。
いそいそと私は支度を始めていた。
理由は聞かないでもらいたい。
分かっているでしょうに。

「おっ?
 クリスがどこかに
 出かけるなんて珍しいね。」

「そうか、ゾンビとデートだな?」

「お父さんと
 同じじゃなーーーーい!!!!
 まともな人間とデート!!!」

とうとう
現れてしまった奇人変人のお父さん。

「家の事は気にせず楽しんでおいでよ!」

「行ってきます!!」

なんだかんだいって
物分かりのいい人である。

中央広場に到着し、
適当にブラブラしていると
ヤサ男が現れた。

「結局来やがったのか。」
「何ならもうお開きにする?」
「ごめんなさいクリスさん、
 おいでいただきにありがとう
 ございます。」

ひねくれた態度を取りながらも、
少しイジめてやるとすぐ素直になる。
結構かわいく感じる♪





「それでどこに連れて行ってくれる訳?」
「ん〜っと、本屋さん行きたいな……」
「初めてデートがそこですか。
 確かに私たちにとってはいい
場所だけど」

ゆったりした
デートになりそうな予感。
ユアンらしくていいデートコース
だと思った。

「流石に近所の本屋だと味気ないから、
 俺の地元行かない?少し歩くけど。」

「ええ、構わないわよ。」

少し距離を離して歩きはじめる。
並んで歩いてみると本格的にデートが
始まったのだと緊張した。


いつもは
ならんで歩かないので分からないが、
意外と身長差があるのだと知った。
横目でチラチラと眺めながら歩を
進めていく。

20分程歩いた所で
本屋らしき場所が見えてきた。

「ここが良くいく本屋。
 古ぼけた所だけどいいトコだぜ。
 先に入りなよ。」

ユアンに言われて先に本屋に入る。
独特な本の香りが辺りを包んでいる。
紙の香り、木の香り。
学校の図書室でもいつも
感じている匂いだ。
「さて適当に
 立ち読みタイムにはいりますか!!」

「おおーーーいい!!
 デートでいきなり立ち読み
 かーーーいい!」

と心の中で絶叫する。
うーむ、これはデートなのでしょうか?
でもね、これだけの本は魅力的すぎるね。
うん、本バカだね私は。



まぁいいか。
目に留まった本をとり読み始める。

自分の知らない物語と出会ったり、
知らない知識を分けてもらったり……。

こんな素晴らしい事を手軽に
できるのが本なのだと私は考えている。

そして、
二人をつなぐ共通の価値観であったりする

今の本を読み終わり、
次の本へと移る。
そんなことをしながら少しずつ
店内を移動していった。
きっとユアンの方も同じ状態だろう。

そうしていると
何故か反対側にユアンの姿が見えた。

何故だろうと思いつつ、本を読み続ける。

私が右に近付くと、ユアンは左に近付く。

たまたま読みたい本が
進行方向にあるのだろうか?

………
二人の距離はすごく近くなった。
二人で並んで歩いていた時はこんなにも近づけなかった。
良く分からないけど不思議な気分。

そして………

「うおっ!」 「はにゃっ!ゴメン!」

二人の体は完全に密着し、
二人の手が触れた。
手を伸ばす方向には一冊の本が。
二人は同じ本に
興味をもったらしい。

しばしの沈黙、静寂、
そして不思議な気持ち。

初めて彼の手の大きさと温もりを感じた。

この寒空の中だから
より一層強く感じたのだった……

Fin、


刹那雪
2009/11/03(火)
13:29:36 公開
■この作品の著作権は刹那雪さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのコメント
ども、作者の刹那雪でやんす。

今回はあの二人はお休みしてもらって
クリスとユアンの話を書きました。
図書恋第二弾です(ぇ

まったりゆったり本屋も
いいじゃありませんか、
二人は満足しているようです。

次は12月ネタですが、
いといろと立て込みそうなので……
スルーするかもです(待

この作品の感想をお寄せください。
借金返えそうぜ(´-ω-)O http://cwca.mobi/OVA/0013A4/ Name:
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■2011-10-14 10:39
ID : lPjwwPrHNTA
明日からがんばるんじゃない。今日をがんばり始めた者にのみ明日がくるんだよ!(;・ω・)● http://mbtu.net/?id=movie&num=4d4s500tzl1 Name: Megami
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■2011-10-11 05:05
ID : lPjwwPrHNTA
だよね、少ないよねこれは・・・(リュウデレ)
ナイラばっかに目線いってるからクリスと部長もメインにしてみるか!
がんばれナイレシ!!
Name: シャンベル
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■2009-11-05 21:04
ID : M1.0HMHDDp.
わーい、
ミツバ振り回して歓喜に満ちている次第です(ぇ

竜デレ……うん、専門外すぎる。
クリユアの方は次回作はないかもしれませんが、
ナイレシは最終話まで執筆し続けますので
今度っ今後ともよろしくお願いします。(ペコッ
Name: 刹那雪
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■2009-11-05 19:00
ID : 0YgQRQCk6a6
ははははははは、インデレの未来は明るいぜ!(いきなりなんだ

いやぁ、それにしても参謀才能ありすぎでしょう。

私も会長として頑張らねば!(最近竜デレばっか描いてるorz)
Name: シャンベル
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■2009-11-04 22:12
ID : M1.0HMHDDp.
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