ノーマ学院体育祭(ナイラーザ×レシア) |
爽やかな秋風が吹き抜ける 8月の終わりごろ。 日増しに清々しく なってゆく季節とは裏腹に 俺は憂鬱な気分だった・・・。 妙なクラスの団結に恨みさえ持った。 〜一週間ほど前〜 「さて来週は待ちに待った ノーマ学院体育祭です。 「数多くの種目がありますので ぜひ積極的に協議に参加して ください。」 心の中で「遠慮願いたい」と呟く。 勉強に自信があっても 運動はからきし駄目、 右脳を使うより左脳を使っている方が 性に合っているのだ。 「まずは最後の種目になっている 『二人三脚』から出場選手を決めた方が いいと思います。」 そして一瞬静まり返る。 「「出場選手はナイラーザ君と レシアさんが良いと思いす!」」 異口同音、満場一致、一致団結。 クラスの皆、その団結力は体育祭 まで取っておくといいぞ? 「図ったんだろ?図ったんだな?」 心の叫びはだれにも聞こえる筈がなく 『二人三脚』の走者となってしまった。 だがレシアは割と嬉しそうなのである。 「ナイラーザ君、落ち込んじゃ駄目。 ちょこっとクリームパンあげるから。」 「それで機嫌が良くなるのは レシアくらいなもんだ。」 「ムッ? まるで私がクリームパン大好きで単純な 女の子みたいに聞こえるじゃない?」 「実際そうだろうが。」 「誰だ、 涼しくなってくるとクリームパンを 食べるスピードが上がって来るね?とか 頬袋作って話していた奴は。」 「うみゅぅ〜。 ナイラーザ君の意地悪〜。」 はたから見れば他愛ない会話。 でも少し憂鬱が晴れた様な気がしてきた。 「確かナイラーザ君は 二人三脚だけ出場するんだっけ?」 「あぁ、それだけだな。 レシアはもう一つ出場する はずだったが何だった?」 「………私もよく覚えてないや。 確か本能的に出場しまーす! って言ってた様な気がする。」 おい、野性的だな。 「時間見つけて一緒に 二人三脚の練習しようね?」 「レシアはスポーツ嫌いじゃないのか?」 「頭使って覚えるよりは平気だよ。 頭で記憶するより体で記憶する方が 早いタイプ♪。」 「足手まといになってしまうかも しれないがどうか練習に付き合って 欲しい。」 「うん♪ よろしくね!」 一週間かけて俺たちの特訓は続いた。 俺が弱音を吐きそうに なっているときはレシアが、 レシアがくじけそうになっている 時は俺が励ます。 競技の中でこんな風に 練習できる物は数少ない。 二人が一心同体になってたった 一つのゴールを目指す。 いつの間にか一位でゴールしたいという 気持ちさえ現れるようになっていた。 目標に向かい二人で走り続けた……… 〜9月1日〜 「あ〜、マイクのテスト中。 みなさん校長のノーマです。 そこそこ体育祭を頑張ってください。」 「教頭のロベルトだ。 皆一生懸命に競技に取り組むように。 特にエシュターは頑張って息遣いを 荒くしておくように」 少し変な挨拶も終わり 続々と競技が始まる。 障害物競走、リレー、球投げ、棒倒し、 剣術大会(ミニバージョン)………… 出場している競技は少ないが応援に 俄然力が入る。何故かほとんどの競技に 薬学部のアイツが出場していたのが少し 気になったが…… 〜薬学部テント下〜 「ちょっとは みんなも出場してよ!!!!!!」 「そもそも5人しかいない学部に 体育祭の出場を被ること自体 間違っていると思うのだが……」 「仕方ねぇじゃん。 エシュターが連続で出場して ヘロヘロになってた方が面白いもん。」 「ちょっと待ったああああ! 僕をほぼ全ての競技に出場させる 理由はそこなの?」 「あと出場選手を決めるとき 教頭先生が小声で『エシュター、エシュ ター殆どの競技はエシュターフゥッ!』 って言ってたから……」 「教頭先生――――!!!! フゥ、じゃないでしょ! フゥじゃ!!!」 「にしてもエシュター息遣いが荒いな… ダ、ダメじゃないか……(ポッ」 「エシュターく〜ん、 健全なおホモだち作っちゃ駄目よ〜。」 「まだおホモだちじゃな〜〜いいいい!」 薬学部の波乱は続く………。 〜パン食い競争〜 アナウンスによると 次はパン食い競争の様だ 隣で座っていたレシアが すくっと立ち上がる。 「それでは行って参ります!!」 意気揚々と入場門の方へと駆けてゆく。 「あぁ、怪我はしない様にな。」 出場選手が全員集まり、競技が始まる。 この競技は走る距離が短いから割と 女子の出場が目立つ。 不意に空砲の音が秋空に 響き競技が開始される。 全選手がグングンとスピードを 上げて最初のパンに差し掛かる。 レシアも着いて来ている。 コース内に設置された パンをジャンプして齧りつくのが 通過の条件。一般的なルールだ。 適当にみんな齧りついて ゴールに一目散に走り続ける。 ただ一名を除いて…… うん、レシアだ。 何故かは知らんがパンに 必死に齧りついている。 チョコチョコとジャンプしながら。 クラスの皆が呆れた顔や 微笑ましい顔で見つめる中俺だけが 真実に気が付いてしまった。 「あいつ、 クリームパンが丁度当たったんだな。」 その後ブービー賞で 帰ってきたレシアはこう言った。 「何であんなに食べにくい所に クリームパン置いておくかな?」 「パン食い競争はそういう競技だ。」 「クリームパンじゃなかったら もうちょっと順位良かった気がする。」 そして待ちに待ってない 『二人三脚』の時間が差し迫ってきた。 高鳴る心臓を抑えつつラインに並ぶ。 足がガクガクと震える。 「緊張してるのは私も一緒。 二人で緊張したらいい結果出ないよ? 特訓を思い出そうよ?」 「ああ、そうだな。」 とはいいつつも緊張で レシアの声が入ってこない。 殆どアイコンタクトで会話する。 「パン!!!!」 と考えているうちに 競技は開始された。 確実に出遅れてしまった スタートダッシュ。 その差を埋めるための必死の追い上げ。 段々と良い緊張感になって来るに従い こんな声が聞こえてきた。 「レシアさんとナイラーザ!!! 二人の熱い走りを見せてくれよ!!!」 「レシアさん、 ファイトです!ファイト! 特訓してるの見てましたから!!!」 「ウチの焼いたパン食べたから 百人力だろう?」 単純に嬉しく思えた。 いつも一人一人がバラバラのクラスが 一つになりつつある。 俺たち二人の背中を 声援の追風が後押ししてくれる。 力強い応援に体が応えていく。 そして…… 「うおおおおおおおおおおおおお!」 「レシアさん、さすがです!! ついでにナイラーザさんも!!」 「これからもウチのパンを御贔屓に 何せパン食い競争のパンはうちの パンだからね?」 未だに声援の追風は止まない。 どうやら俺たちは一位で二人三脚を 走り抜けた様だ。 「ハァハァ、ナイラーザ達すげぇな」 「称賛に値すると思う。 良い走りだった。」 薬学部の二人が そんな言葉をかけてくれた。 全身の力を使いきった今は何も言葉が 入ってこない。 「ナイラーザ君、やったね♪」 「これも練習に付き合ってくれた レシアのおかげだ。」 勝利を噛みしめた二人はパチンと ハイタッチを交わす。 高らかな音が澄みきった 秋空にスっと消える…… 生まれて初めてスポーツが 楽しいと思えたそんな秋の思い出に なった。 Fin、 |
刹那雪
2009/08/22(土) 12:20:51 公開 ■この作品の著作権は刹那雪さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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前回に引き続き 感想誠にありがとうございます。 ん〜っと二人の仲は割と発展しております(待 結構あんなことやこんなことを‥‥。 それでは10月ごろに作品でお会いしましょう。 |
Name: 刹那雪 | ||||
■2009-08-25 07:44 | |||||
ID : 0YgQRQCk6a6 | |||||
あれ、ナイラーザがやっぱりいい奴に・・・・・(汗 この微妙な距離感がイイ味出してますぜ、旦那! 学園祭編、期待しちゃってもいいですかね!? これからもがんばってくださいな! |
Name: アッシュもどき | ||||
■2009-08-25 03:51 | |||||
ID : YSTd7u6mYVs | |||||
ピックアップされてしまった、 ちょっと「ウホッ!」なノベルに 見えちゃうじゃないか!(ぇ 感想ありがとうございます。 |
Name: 刹那雪 | ||||
■2009-08-22 20:11 | |||||
ID : 0YgQRQCk6a6 | |||||
ま だ おホモ達ではないのか…… レシアがかわいくて良いですw |
Name: まむぅ | ||||
■2009-08-22 20:08 | |||||
ID : N/QMgFMlodg | |||||
そ ん な に み つ ば と ご は ん が く え る の だ? とりあえずありがとさ〜ん。 次は「学園祭」の話でお会いしましょう。 |
Name: 刹那雪 | ||||
■2009-08-22 20:05 | |||||
ID : 0YgQRQCk6a6 | |||||
はい、トキメキをありがとぉぉぉぉぉ!!!( これで飯37杯いけますわ。ミツバならば58株!! 私も同盟の絵を増やさねば・・・('ω')、 |
Name: シャンベル | ||||
■2009-08-22 20:03 | |||||
ID : M1.0HMHDDp. |