盗んだものは− |
パン屋、エルニード。 赤いバンダナを巻いた男、ガゼルはタマゴサンドを頬張っていた。 其処へまた赤いバンダナを交差させる様に巻いた男がやってきた。 ガゼル「……よお、フォーゼル。お前も食うか?」 フォーゼル「…俺の《完璧なる》変装を見破るとは…流石だな、ガゼル。」 サングラスとマスクをした男、フォーゼルは、ガゼルの反対側の席に座る。 ガゼル「ミルクセーキとあんぱんでいいか?」 ガゼルはミラクルセットで当たったミルクセーキ(L)とあんぱんを差し出した。 ちなみにガゼルは、オレンジジュース(M)とタマゴサンドである。 フォーゼル「…なんだこの馬鹿デカい飲み物は…」 ガゼル「此処の店はこうゆーサイズなんだってよ。俺のダチなんか全部オレンジジュースだったんだぜ」 マスクを外しながらガゼルのオレンジジュースを見て(Mサイズは500ml)、ミルクセーキを一口飲む。 フォーゼル「…そういえばこんな事があったな…」 フォーゼルは紅蛇に居た頃について語り出した。 **** 男「待てーい!!」 中央広場。身なりからして金持ち、そう思わせる男が必死になってとある男達を追う。 ガゼル「へへっ…贅沢してる暇があったらちっとは運動しとけっての!! フォーゼル、お前はこの荷物持って右の方行けよ!!ミゼルはあっち突っ走れ!!」 紅蛇のリーダーことガゼルは、男から引ったくった荷物を慣れた様子で分け、ゼル三兄弟は散った。 男「わわっ!!」 盗みの知恵。荷物を盗られた男は3人を一人で追う事が出来ず、少しその場で頭を抱えた後、3人の中で比較的大きな荷物を持ったフォーゼルを追いかけ始めた。 ガゼル「あーあ。あいつ俺等ん中で一番速い奴に付いてったな…」 走る速度を緩め、駆ける盗賊と追う被害者に視線を送る。 ガゼル「さて、一足速く質屋で換金してくるかな…」 **** フォーゼル「ふぅ…足が遅いくせに俺を追うとはな…」 チラリと振り向けば、ゼエゼエと息を切らせても尚、俺を追う男がいた。 フォーゼル「…潔く諦めた方が良い」 ゼエゼエと息を切らせていない俺に対し、この男は疲れ果てている。 男「あ…諦めるものか…ぜぇ…」 崩れる様にその場に座り込み、フォーゼルが持つ、盗んだ物に手を伸ばそうとする。 フォーゼル「??? そんなに高価なものが入っているのか?」 フォーゼルは大きな荷物の中身を見てみる。 フォーゼル「こっ…これは−!?」 **** ノーマ学園の食堂。 昨日パン屋でフォーゼルから聞いた話をエシュターとアルバートに話す。 エシュターは食堂のおばちゃんに出された、3本目の牛乳を飲みながらガゼルに続きを促す。 エシュター「……それで、フォーゼルが何を見たんだい?」 ガゼル「実は−…」 **** 話しながらミルクセーキをやっと2分の1にまで減らすことに成功したフォーゼル。 フォーゼル「(クソッなんだこのミルクセーキは!!こんな物昼食に飲みきるもんじゃないだろ…!!)その荷物の中には−…」 懐に手を突っ込み、ごそごそと何かを取り出そうとしながら続けた。 **** フォーゼル「!!」 男「ああっ!!わしの…!!わしの−」 …通りで重いと思った。 荷物の中身、其れは黄金の男の像(1/3等身)であった。 男に似て、頭が光り輝くマッチョな像…… 男「わしの1億シルバで作った像が!!」 フォーゼル「…」 この男がいろんな意味で哀れだ。俺はそう思った。 流石に全部はひったくれない。(むしろ恥ずかしい) とりあえず高価な物だから少しでも欲しい所だ。 俺は像を岩に叩きつけた(思い切り) フォーゼル「はぁっっ!!」 バキン←黄金の像が頭と胴体に分かれた。 男「はわわわ…」 フォーゼル「俺は頭から下を貰っていく。お前には頭だけを返そう」 俺は男に返したつもりだったが… 頭の部分はバウンドして生活排水溝に(略) 男「うっうわあぁぁぁ!! ……よくもっ!!ヘッドフラッシュ!!」 フォーゼル「…」←早々と逃げた **** ガゼル「…だんだんあん時の記憶が蘇ってきたんだけどよ…もしかして、あの被害者の男って……」 フォーゼル「そうだ。それとこないだこれを拾った」 フォーゼルは懐からある物を取り出し、テーブルに置く。 その物(ブツ)の重さが伺える音がした。 ゴトン←黄金製男の頭 ガゼル「やっぱり俺等の学校の校長だー!!」 フォーゼル「流石に俺は持っていたくないもんだからな…ガゼル、お前が戻して来てくれないか?」 ガゼル「…あん時俺も盗みに働いてたろ… っつーかバレたら俺、退学だぜ?」 **** ガゼル「…という訳だ」 ごとん←ブツ エシュター「…へぇ。 それでなんでその《頭》を僕に押しつけているのかな?ガゼルー」 ガゼル「いいだろ?俺とお前の仲なんだしよ」 その時、今まで黙って鬼殺しを頬張っていたアルバートが騒ぎ出した。 アルバート「何ー!?エシュターはガゼルといい仲なのか!?」 ガゼル「………」←呆れている エシュター「聞こえが悪いよ… というかアルバート、君何でそんなもの食べてんのさ?」 アルバートはスレインを見た。 ああ、そうか。またスレインか。 エシュター「……とりあえず今すぐトイレに駆け込んだ方がいいよ。」 アルバートは返事もせず、ただ青くなっていった。 アルバート「……… ニュボリゴー」 ガゼル「??? なんだ?訳分かんねー事言って走ってったけど……」 エシュター「……ぶちまけに行ったのさ、シーナみたいに。」 その後、アルバートが猛ダッシュでトイレに向かったが生憎男子トイレは満員で、アルバートは止む終えなく女子トイレに駆け込み、脱出時にシーナに見られたことはアルバートの日記だけが知っている。 **** エシュター「…さて、僕の用事(ブツ返還)も済ませようか」 ガゼル「おっ、サンキュー」 食堂から出て、2階の職員室を目指す。 フクロウ「…また災難に巻き込まれたのだな」 エシュター「(…こんな物持ってたら色々と誤解が生まれそうだよ。 さっさと済ませたい…けどなんかイヤな予感がする。)」 階段を5段ほど上がってみる。 やけに近い位置で足音が聞こえる。 …後ろが危険、そう思いながらも振り向いてしまった。 教頭「……」 エシュター「キャーーー!!!」 教頭「私が欲しけりゃ捕まえてご覧なさ〜い☆」 教頭は真顔のまま、そう言って走り去ってしまった。 エシュター「…と、とにかく災難があっという間 に去ったね…」 フクロウ「…うむ」 −少ししてからの教頭はというと。 教頭「……押して駄目なら引く作戦も駄目か…うむ、これはなかなか萌えてきたぞ…!!」 テストの妖精「うわ〜漢字が違うって!!!ゲロシャワルシャビシャシャ」 **** 何とか2階の廊下までやってこれたエシュター。 しかし前方にはフラフラとした足取りのアルバートが居た。 …随分と顔色が悪いようだ エシュター「や、やあアルバート。」 アルバート「エ、エシュター… 俺は、俺は…先ほどつわりというものを体験してきた!!」 エシュター「何がどうなればそんな発想になるんだー!?」 フクロウ「興味深い発想だな… しかし少年、この男、本気で言っている様だぞ」 エシュター「(えー!?)」 アルバート「エ、エシュター…俺はどうすれば良い… 俺は…俺はアルバート・クレイトンになれば良」 とりあえずエシュターは逃げ出した。 −職員室前− エシュター「はぁ…はぁ… あの場に居たら誤解される!!」 フクロウ「全くだ」 エシュター「さて、用を済ませようか」 職員室に入ると、魔導の先生と物理の先生(…とテストの妖精)だけしか居なかった。 エシュター「(…ちっ、校長は居ないのか)」 フクロウ「少年、教頭の机が凄い事になっているぞ…」 エシュター「…え? あわばばばばば!?」 なんと!!教頭先生の机の上は、エシュターパラダイスと化していた!!(盗撮写真のプチ展覧会) しかも、ナイラーザからパクった似顔絵、セト(ボチ?)から奪った名前入り下着が額縁に入れられていた!! エシュター「ガタガタ…」 ガタガタ「ガタガタ」←廊下より とりあえず見なかったことにして校長の机に置き手紙とブツを置いておくことにしたエシュター。 エシュター「……よし、こんなもんだろう」 『校長先生の物らしき物を拾いました。先生がおられないので置いておきます。 エシュター・クレイトン』 エシュター「(はやく行こう)」 フクロウ「それが良い」 ガチャ… 教頭「……」 職員室のドアを開けると、教頭先生が待ち構えておりました。 エシュター「ワァーーーオ!!!」 教頭「お帰りなさいませ、ごしゅj」 ガチャ。 エシュター「ガタガタガタ…」 フクロウ「もの凄くピンチだな」 とりあえず状況確認。 魔導の先生は…本を読みながら優雅にお茶を飲んでいる。 物理の先生は…… …なんだ?校長のマッチョになりたいシリーズを読んでいるようだ 物理の先生「なかなかであるな… …ほほう!!この校長の上腕二頭筋なんか…」 エシュター「(…はぁ、ここの大人って奴は… よし、最終手段だ!!)」 エシュターはしゃがんで変装セットを漁り始めた。 エシュター「(…よし!!完璧)」 ガチャ 教頭「照れてなんかいないんだからねっ……… …!?居ない?」 教頭は諦めて廊下に出ていってしまった。 ちなみに魔導の先生は少し驚いてお茶を飲んでいて、物理の先生はマッチョに夢中だ。 エシュター「(……よし、変装を解いて出ようか)」 魔導の先生は相変わらずだし、物理の先生は血眼で読書中…だが後ろからテストの妖精に覗かれている。 フクロウ「…今がチャンスだろう」 エシュター「(…よし)」 −ひっそり着替え中− 着替え終えてエシュターは職員室から出た。 **** エシュター「アルバートも教頭も居ない。 ガゼルに報告しておこうか。」 しかし、またも災難がエシュターを襲う!! ギュロロロロ… エシュター「…… 来たああああぁぁぁ!!」 フクロウ「少年はトイレ運が悪いのだな」 エシュター「それガゼルにも言われたから!!」 エシュターはトイレに走る。 すると前方からサングラスとマスクを装備した男が走ってきた。 エシュター「(フォーゼルだ!! でも!!ここでUターンしたら僕のアレがブッシャーだよ!!) う、うおおぉぉ〜!!!(腹に刺激が来ないように走ってる)」 フォーゼル「うっ、うおおお〜!!」←何かフォーゼルも必死 フクロウ「…思ったのだが少年…あのフォーゼルという男もトイレに向かって居ないか?」 エシュター「え?」 フォーゼルはお腹を押さえてトイレ一点を目指している。 エシュター「本当だーーー!!! でも僕には…我慢出来ない!!」 フクロウ「そりゃそうだ。下痢と言うものはそうそう我慢するものではない」 そしてエシュターとフォーゼルは男子トイレに入って行った。 **** こんこん エシュター「入ってますかー!?」 「入ってます」 ダンダン!! フォーゼル「早く出ろ!!」 「なかなか千切れないよ」 スレイン「う●こ?」←廊下から エシュター「わー!!」 フォーゼル「クソッ!!昨日のミルクセーキが今になって…」 エシュター「(凄い必死だ…)」 そして今更になってフォーゼルはエシュターに気付く。 フォーゼル「…エシュター・クレイトン!! …俺はもう、お前を襲ったりしない、が… お前も俺も、運の尽きだな…」 エシュター「トイレだけに運!? 不吉じゃないか!!諦めちゃ駄目だ!!」 エシュターはもじもじ度が2倍になった。(我慢が近い) フォーゼル「何処でしろと……っ」 エシュターは女子トイレを指さした フォーゼル「………(気絶)」 エシュター「気絶する前に僕達はあそこへ行かなくては行けないんだ!!」 フォーゼル「ああ…あそこが俺たちの楽園……」 エシュターとフォーゼルは凄い勢いでトイレに駆け込んだ。 **** 「さっき教頭先生が凄い発言してたわよ」 「え〜マジ?どんなカンジ?」 フォーゼル「(……おい、入って用は足したが良いが…どうやって出るんだ?)」 エシュター「(人気が少なくなってきたら急いで出るしかないよ…)」 すこし待つと人が居なくなったようだ。 エシュター「…よし」 ガチャ フォーゼル「…」 ガチャ 隣り合った個室から2人が出る。 シーナ「……え?」 フォーゼル「…見られた」 エシュター「大丈夫、僕はシーナに何回も見られてるから慣れたよ」 フォーゼルはエシュターを蔑む視線を送った。 シーナ「えっと… ウッ!!」 タッタッタ…バタン!! げろげろ〜 フォーゼル「……」 エシュター「…うん、ガゼルの所に行こう。 フォーゼルもガゼルに会いに来たんでしょ?(僕を狙ってる訳じゃ無いみたいだし)」 フォーゼル「…まあ、様子見だ」 校長の様子はどんな感じかを偵察にきたという。 エシュター「ああ、それならさっき僕が返してきたよ」 エシュターはガゼルに押しつけられた事、自分が返してきた事についてを告げる。 フォーゼル「…本当か?」 エシュターの言葉を信じてないのか、確認するように聞き返す。 フォーゼル「本人に渡したのか?」 エシュター「本人が居なかったから、机の上にメモを置いて来たんだよ …ていうか本人に直接は無理だって」 蛍光灯の光を受け、キラーンと光る頭(校長本人ではなく、置いてきたブツ)を思い浮かべる。 フォーゼル「…なら、ちゃんと在るか確認する。 確認したら俺は帰る」 分かった、とエシュターは職員室に向かう。 **** フォーゼル「…ここか」 エシュター「うん、じゃあ入ろうか」 エシュターがドアを開けようと、ドアノブに手を伸ばした瞬間。 フクロウ「待て、少年」 エシュター「え…?」 フクロウはエシュターにこう告げる。 フクロウ「今、入ったら眼帯の男…アルバートと言ったか… 大変な目に遭うぞ?」 エシュターはフクロウにどういう事?と聞くと、フクロウは フクロウ「ならば静かに確かめるが良い」 とだけ言った。 とりあえずエシュターはドアノブをそっと開け、隙間から中の様子を覗く事にした。 フォーゼル「…」←暇なのでエシュターの上から中を見てみる エシュター「!!」 エシュターに衝撃が走る。 職員室の中…、教頭の机のエシュターパラダイスにアルバートがたかっている。 アルバート「このアングルは… ムフッ!ムフフッ!!エシュター最・高!!」 フォーゼル「とんだ変態だな」 エシュター「ガタガタガタガタ…」 フクロウの言う、大変な目。 アルバートの餌食になるかもって事か、とエシュターは震えた。 フォーゼル「…で、変態は置いといて」 エシュター「置いとけないよ!ほっといたらとんでもないって!」 テストの妖精「掘っといたらって…君も変態じゃないか!!」 エシュター「君は黙っててくれないかな!?」 フォーゼル「気絶させれば良いんじゃないか?」 エシュター「一歩近づく度、僕の平凡さが失われて行くんだよ…」 こうして作戦を立てていると、フクロウが2人に告げた。 フクロウ「まずい、教頭が廊下を曲がってこっち方面に来るぞ…」 エシュター「なんだってーー!!?」 エシュターは一目見られたら教頭の尾行に遭うだろう。 フォーゼルはエシュターと行動を共にしているという理由で裁きが下るだろう。 廊下を走って違う階段に着けば良いが… 今の近道は此処しかない。とっさの判断でエシュター達は職員室に滑り込み、机に隠れる。 バタン 音を立ててしまった。 そっと確認するとアルバートはエシュターの写真を撫でている所だった。 エシュター「アルバートは気付いてないみたいだ… というかもはや行動を見たくない…」 フォーゼル「それで校長の机は何処だ?」 はっと目的を思い出し、エシュターはこっそり指を差す。 遠くだが、歪な球体がてかてかと光を受けて輝いていた。 エシュター「うん、在るね」 確認をして、これからを考える。 がちゃ エシュター「!!」 其処へ、運悪く教頭が現れた。 作成中… |
青龍乱舞
2008/05/25(日) 22:52:52 公開 ■この作品の著作権は青龍乱舞さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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