Three legendary
はじめに・・・

こんな俺がしんテキストを初っ端から使ってしてすいません
使い方がまだよく分かっていませんが、そこのところはご愛嬌で(笑)
では。

・書いてる人は計画性のない人間です
 恐ろしい容量を伴う可能性があります

・書いてる人は、書いてる途中飽きる可能性があります
 期待しない(する人なんかいないと思いますが)でください。

・ところどころにオリジィナルな所がでてくるでしょう

・面白くありません

・下手です

・アドヴァイスは大歓迎です(でも中傷はいやですね)
 じゃんじゃん言ってくだせぇ。

・ギャグ・シリアス、グロテスクな表現がでる可能性があります
 (吐き気が出る程度ではないかも・・・)

・書いてる人は異常者の一歩に近い人です
 (通常の思考を三分の一くらい残ってます)

・因みに、書き方がまだよく分からないので、分かるまでここに
 第一話から書かせてもらいます(読みにくいと思いますがごめんなさい)

では、このことを心して(?)読んでくださいね






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜プロローグ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

私の声が聞こえますか?

何もない、真っ暗な空間から
凛とした涼しげな声が響いた。
人影は・・・ない

「・・・聞こえている」

先程の声の反対側から『声』が帰ってくる
こちらは、低く、なんとなく冷たい感じがする声だ。

「よかった・・・しっかりと聞こえているのですね」

ホッと安堵の声がまた真っ暗な空間に響く。

「俺に・・・・何のようだ・・・」

冷たい『声』がいらだちを出したような
感じで言葉を発する。

「話は後ほど・・・暫く待っていてください」

心地よい涼しげな声がした方向から
まやぶい光が走り、冷たい『声』の主を包み込んだ。







「・・・・・・・・ここは?」

光がやむと目に入るものがあった
あの空間では見れない光景だ・・・。
白い壁・天井、白い机、白い窓、全てが
白に統一された部屋だ。

「―――――――――!!」

しかし、部屋よりも驚くことがあった
先程まで、自分にはなかった物が。

「から・・・・だ・・・・?人・・・の体・・・・?」

身体に見間違うこともない。
正真正銘、ヒトの身体があった。

「・・・・・・・・・・・・」

放心して暫し自分の手を見るばかりであった。
だが、彼にはそんな暇さえ与えられないかのように
『ドンッ!』と近くで何か落ちる音がした。

「今度は何だ?」

落ちた方向を見る落ちてきたのは『ヒト』だ。
17か18くらいの女とそれと同じくらいの男だ。
男が下敷きとなっており、女はのしかかるように
上に乗っている。

「う・・・・うーん」

気絶でもしていたのだろう、少々の間があった
女は目を開けたが虚ろな目だった
まだ、しっかりと見えていないのだろう。

「ォ・・・モイ・・・」

下敷きになっていた男が呻くように言った。
そのときになってやっと女は自分が何処にいるのか
理解したようだ。

「あ・・・・ご、ごめん!」

少し大きめな声で男から飛び退く
男はやっと解放された、というような顔で
ゆっくりと立ち上がった。
・・・・小柄な男だ、上になっていた女より小さい男だ。
女の方は、まぁ、普通の身長だ、特徴もあるわけでもない。

「あれ?あんた誰?」

女の方が『彼』を指を差す。

「俺が聞きたい・・・貴様らの方こそ何だ?」

「僕達はリクレールという女性に呼ばれたんです」

小柄な男がおずおずという、小心者な性格らしい

「・・・リクレール?あの声の名前か?」

目を細め、疑惑の目を小柄な男に向ける

「え・・・えぇ、ひょっとして何も聞いてないんですか?」

こちらの方も「なぜ?」という目を『彼』に向けている

(俺は嫌われてるのか?)

あの真っ暗な空間で聞こえた声に自分が何をした
そんなことを思いながら、男に答えた。

「あぁ、全くな。俺は待っとけとしかいわれとらんからな」

「はぁ、そうですか」

すっと、女の方に目を向けると
先程から部屋の中を動き回っている

(俺の方に『誰』と聞きながらもう興味をなくしたのか)

飽きっぽく、それでいて落ち着きがない
『彼』があまり好きになれない人種だ。

(ん?なぜ、あんな性格を見ると苛立つんだ?)

自分でもわからなかった・・・。
少し考えても、結局理由がわからずあきらめることにした。

「ま、とりあえず立ち話もなんですし座りましょう」

「いいのか?ここ、お前の部屋でもないんだろう?」

「そりゃぁ、そうですけど・・・・」

仕方ない・・・と座ろうとすると
白い扉が開いた・・・出てきたのは・・・

「どーも、女神リクレールです」

コップの乗っている皿を持って
白い髪の女性が入ってきた。
整った顔立ちをした美人・・・だ。

「・・・・・・・・・・・・・・・」

『彼』が女性を直視し言葉を失った。
・・・・『彼』が女性をまじまじと見たのは
美人だから、というわけではない、明らかに『異端』なのだ。
角がある・・・普通の人間であれば額から
角があるはずがない。

(女神・・・といっていたな・・・まさかこんな奴が
 俺や奴らを呼んだのか・・・?)

「さぁさ、座ってください、紅茶もどうぞ、おいしいですよ」

女はそれを聞くや否や、即座にすわり茶を飲み始めた。
茶を飲み、少し経つと、女は『女神』に話しかけた。

「で、リクレールさんあたし達を呼んだ理由
 そろそろ教えてよ」

それを聞くと『女神』は「わかりました」といい
彼らに理由を話し始めた。




女神の言葉は唐突だった。

「貴方達に私の世界を救って欲しいのです」

一瞬呆然とした空気が流れる。
確かに「世界を救えと」といわれれば呆然となるし
その日数が15日しかないといわれれば
分からないこともないが・・・。

「お前の言い方だと本気に見えん、それに緊張感がないぞ」

女神・・・リクレールはやる気のない目で
しかも、テーブルにあごを置き、だらけた姿勢だった
これでは、緊張感がないという以前の問題だ。

「そうですかぁ・・・?いや、最近寝てなくて・・・」

「ふぁー・・・」と口を大きく開けあくびまでし始めた。
『彼』の額に青筋が出、今にも何か切れそうな状態である。

「私の部下もゼンゼン働いてくれなくて・・・
 ギリギリまで仕事、してたんです」

ピキッ・・・青筋がまた増える。
完全に切れそうになったとき、物凄い勢いでドアが開いた。

「嘘をつかないでください!!我たちが一番働いていたんですよ」

扉を開けてでてきたのは銀狼・・・と鳥、そして竜だ。
特に銀狼が、怒りをぶちまけている。

「なに言ってんですか・・・あなたたちの睡眠時間は5時間
 私は14時間ですよ・・・もう眠くて眠くて・・・」

いや、あんたの方が寝てるだろ・・・と
ツッコミを入れそうになったが止めた・・・
こういう輩には何を言っても無駄だ、と考えたからである。
銀狼がさらに言う。

「我らはこれから働くんですよ!?
 あんたは、これからいくらでも寝れるじゃないですか!!」

(いや、女神も自分の世界を救うんだから手伝え)

「むぅ・・・クロウの真面目馬鹿」

悪態をついて言う、その姿はまさしく子供と同類だ
と、ひと段落話が終わったと思ったとき
声が響いた。

「お・・・狼が喋った!!」

「驚くの遅いですよ・・・ルナさん」

小柄な男が言う、コイツ等全員集まれば
お笑い集団でもできんじゃねぇの?と『彼』は思った。

「で、本題に戻りますね」

リクレールが冷たい声で言う。
先程の彼女とは打って変わって真剣な顔だ
これが本来あるべきはずの彼女の顔なのだろう。

「わたしの作った世界を救って欲しいといいましたね」

「あぁ、なぜ俺達に?と疑問はいくらでもあるがな」

「それは分かります・・・しかし私はどうしても
 出れない理由があるのです」

その理由が彼にはわかった・・・
目を見れば分かる・・・誰でも。

「ぐっすり眠りたいからだろ」

リクレールの顔が驚きの顔となる
あの、ふざけた顔だ。

「ギクーーーー!!そ、そんなことはありませんよ。
 わ、私は以前にも戦いに出たのです
 そのときのある敵の力により
 戦線離脱するしかなくなったのです、そう、そうなのです!」

明らかに動揺の色がでている。
自分に言い聞かせているような感じだ。
そして、逃げ口上が見つかったかのように
喋り始めた。

「そ、そこで貴方達に頼みたいのです!
 私お手製のトーテムを使い、その原因を突き止め
 そして、それの防ぐ方法を・・・」

「ト〜テム〜?」

女が首をかしげて聞く・・・・・・
天然でもあるようだ・・・知ってても得はしないが。

「まぁ、言ってみれば
 『動物の力を借りてビンビン』になるものです」

分かりやすいような・・・分かりにくいような説明である
しかし、女は理解したようで、なるほどと言っている。

「で?トーテムってのは選ばしてくれるのか?」

「えぇ、それが貴方に合うかは別ですがね」

意味深な台詞である・・・トーテム自身にも性格があり
向き不向きがあるというのだろうか・・・?

「この三体から選んでいただきます」

手を広げ、あの、銀狼・鳥・竜を指した
どうやら、人数分しかないらしい。

「では・・・えーっと・・・」

「レイスだ」

「では、レイスさん貴方からどうぞ」

ふむ、と『彼』、レイスはいい
三体を見た・・・どれを選ぶか悩むところのようだ。
リクレールが後の二人に説明している。

「あの、ワンチャ・・・狼がクロウで
 力が強く全体的に肉弾戦向きです
 で、あの鳥がフェザー・・・こちらもどちらかというと
 肉弾戦向きでしょうね、スピードに長けています
 で、竜がスケイル、男ず・・・魔法を得意とします
 肉弾戦は不向きです」

レイスが三体をまた見ていると何か不気味な視線が走った。

「ん・・・・?」

竜だ・・・スケイルというらしいが
物凄い息を荒々しくしてレイスを見ている
頬と思わしきところがポッとそまり
ワクワクと身震いしている。

(こ、これでもう一体は除外できたな)

冷や汗をかきながら、鳥と狼を見る
レイスは・・・・・・

(鳥はあまり好きではないな・・・ということは)

「クロウ・・・俺のトーテムはクロウだ」

ゆっくりと腕をまっすぐに上げ銀狼を指した。

「そうか・・・よろしくなレイス」

クロウはにこやかに笑いを出した
なんとなく安らぎを感じる笑みだった。
次はレイスが嫌うルナという女の番だった。
彼女の方は既に決まっていたようで・・・・

「私はフェザー!!」

と、ビシッ!!とフェザーを指差した。

「よろしくお願いします!ルナさん!」

フェザーはうれしそうに翼をはためかせた
いや、嬉しそうというより本当にうれしさを出している
その証拠に俺はやったぜ的な笑みを出しまくっている。
・・・最後はあの小柄な男だ。

「では、フィールさんはスケイルさんということになりますね」

(変に同情するぞフィールとやら・・・)

フィールという男にスケイルは巻きついた
もう、離しませんよという感じがよく分かる。
フィールは乾いた笑いを出していた。

「じゃぁ、トーテムも決まったことですし!
 そろそろシルフェイドの世界に降り立ちましょうか!」

リクレールがよっしゃ的に拳をグッと握ると
なにか、力を込め始めた。

「あっ・・・・ちょっと待ってください!!」

フィールがいきなり声を上げ
リクレールの動作を止めさせた。

「あの・・・メガネ・・・くれませんか?」

「え?トーテムのおかげで視力は1、5越えくらいはしてますよ?」

「いえ・・・メガネがないと落ち着かなくて・・・
 伊達でもいいのでくれませんか?」

リクレールは少し思案したが
それくらいならと、机からメガネを取り出した。

「ありがとうございます」

礼儀正しく、45℃に身体を曲げ礼をした。

「いえいえ・・・・あぁ、そうそう・・・」

リクレールの方も何か思い出したように
レイスたちのほうも向いて言った。

「おいしい紅茶の作り方も探してきてください
 どちらかというとそちらのほうが重要ですから」

「おい!ちょっとまて!世界より紅茶って何だ!!」

「いってらしゃーい」

力をこめたてを解き放ち・・・光を放った。
うぉーーーーーい!という叫びは少しずつ掻き消えていった。


誰もいなくなった部屋にたたずみながら
リクレールは呟いた・・・。

「過酷な運命を背負いし若者達に祝福があらんことを」

顔を上げたリクレールの目には涙があった・・・
それは・・・まさに・・・・・・・・

『女神の涙』




第一話 :降り立つ

「・・・・・・ここは」

彼が、光が引いてみたものは、森だった。
それほど広いというわけでもないが静か過ぎる森だ。
自分の息遣いが、はっきりと聞こえるほどである。

「レイスさん」

「あ?」

すぐ隣に、メガネをかけた小柄な男が立っている。
フィールとかいう男だ。

「どうやらここが・・・」

「あぁ、シルフェイド・・・・らしいな」

まさか本当に、というような顔をしている
レイスも信じられないのは同じだった。

「あ、あそこに町があるよ!」

長髪の女、ルナが指を指して言う。
いつも急な奴だ、とレイスは思ったが
ま、いいか、とすぐ思い直すことにした。

「どんな町なのかな?速く行こうよ!」

言うや否や、猛スピードで町に向かっていってしまった。

「ちっ・・・気の早い奴だ・・・」

レイスは舌打ちをしたが、フィールは和やかな顔をしていた。

「でも、かわいいですよね・・・・」

「なに・・・?なに言ってるんだお前・・・」

アイツの何処が・・・と続けようと思ったが
フィールの顔が明らかにソレな顔だったので
あえて、レイスは何も言わないことにした。

「まぁ、とにかく・・・俺達も町に行くぞ」

レイスが町を目指そうと歩き始めると
いきなり『グルルルル』という音が森の中に響いた。

「なんだ?もう腹が減ったのか?」

「ち、違いますよ!?僕じゃありません!」

フィールは懸命に手を横に振り自分ではないと主張する
しかし、グルルルと言う声(?)は依然響いていた。

《おい!レイス、野犬だ!!》

レイスのトーテムである『クロウ』が真剣な表情で言う
その方向を見ると、犬と言うよりは狼と言った方がいいであろう
動物が、レイスをにらみつけていた。

「ガアアアアアアアアアア!!」

レイスが動く暇もなく、野犬はレイスを噛み付こうとした
だが、犬が噛み付いたのは空であり、レイスの姿はない。

「チッ、不意打ちたぁ、いい度胸じゃねぇか」

野犬の後ろに回ったレイスが不機嫌そうに言った。
しかし、犬が人間の言葉に返すわけもなく
また、噛み付こうと突進していく。

《剣を構えろ!》

クロウが叫ぶが、レイスは武器を構えずに
野犬に突っ込んでいった。

《聞いているのか!?いくら野犬でも・・・・!》

クロウの危惧は一瞬にして消えた
レイスが、野犬を蹴りで吹き飛ばしたからだ。
蹴りを入れられ、吹き飛んだ野犬はピクリともしなくなった。
絶命・・・である。

「オイ、フィール・・・行くぞ」

「あ、はい!」

ソレを呆然と見ていたフィールはいきなり話しかけられ
ビクッと身体を震わすと、少し上ずった声で答え、後を追った。



第二話 :サーショ

「サーショ」と擦れた文字で書かれている看板を一瞥し
町のほうに目をやる、小さい町のようだが人々の顔を見ると
笑顔が絶えず、良い町だというのが分かる。

「この町活気があっていいね、コッチも元気になるよ」

長髪の女性、ルナが笑顔で彼女トーテム『フェザー』に言う。
フェザーは、それはそうでしょう、とすぐに返した。

《この町には近くにお城もあるし
 作物の育ちもよくて結構栄えてますから》

フェザーのほうも笑顔で解説している。
彼の解説を聞けばなるほど、とも思えてくる
確かに町にある畑を見ると、豊作であり
旅人に欠かせない武器や防具も品揃えも抜群だった。

「始まりの町って感じですね」

フィールも感心したように首を縦に振り
じっと街を見ていた。

《ではここで、各自食糧など整えてから次の行動に移しましょう》

フィールのトーテムであるスケイルが皆を見ていった
それに、異論のあるものはいない。
そして、見物(?)をはじめようとしたとき
背後から叫び声がした。

「うぉおおおおおおおおおおおおお!!」

レイス達が背後を見ると、一人の男が走ってきている
重そうな防具をつけた、兵士である。
その男は重装備をもろともせぬかのようなスピードで
つっこんで来た。

「うぉ!」

さすがに、そのスピードには反応できなかったのか
反応していなかったのか、レイスは兵士のタックルに
もろに直撃してしまった。

「おぉっと!!すまねぇ!!急いでいたんで・・・・・・」

詫びを入れる時間すら惜しいのか
その兵士は、スピードを緩めずすぐ近くの
兵舎に入っていってしまった。

「ぷっ・・・・あははははははは!!
 ダッサーイ!よけ切れてないじゃん」

腹を抱えて、ルナは思いっきり笑い
フィールはそれを宥めているが、内心は笑っているだろう。

「そんなに笑うな、むかつく女だな」

静かだが、しかしその言葉に小さな怒りがあり
誰が見てもこいつはキレてるな、と言うのがよく分かる表情だった

「だってさ〜、いや・・・やっぱいいや」

クスクス、とそれでも抑えているつもりなのか
ルナは少し真顔に戻っていた。

《これはもう、本当に別れさした方がいいな》

クロウがあきれたような顔をして
フェザーとスケイルに同意を求める。

《そうですねぇ、これ以上するとレイスさんが壊れちゃいますね》

《わ、私はレイス様が壊れたときを見てみたいですけど》

スケイルはハァハァ、と息を荒くしてクネクネと
身体を動かしていた。

《・・・・・・・・・・・・・・・・》

《レ、レイス・・・速く行くぞ》

レイスはそれに不満そうに「あぁ!?」とか言っていたが
すぐにここから去りたくなったのか、腰を重そうに上げ
町の奥の方に行ってしまった。

「ぷっくくく・・・・あはははは!!」

それを見計らったかのようにまたルナは大笑いを始めた。
フィールはそれをもう宥めようとはせず
行動を起こそうとしていた。

「じゃ、スケイルさん行きましょうか」

《はい、分かりました、フィール様》

フィールとスケイルはゆっくりとその場を去り
すぐに雑貨屋に入っていった。

《ワタクシ達も行きましょう》

「そうね・・・じゃぁ、とりあえず兵舎にでも言ってみる?」

《情報集めですか?それなら酒場に行ったほうが・・・》

「まだ昼間だし人はあんまりいないよ。
 兵士ならこの世界のこともよく知ってるだろうから
 聞いてみようよ」

確かに、ルナが言ったことは間違ってはいない
しかし、夜に酒場にいっても酔っ払いしかいない気もするが
あまり酒場に重要度はないようだ。
ルナはさっそく兵舎に行くことにした。





―サーショ兵舎―
「おい、姉ちゃん!話し聞いてってくんねぇか?」

兵舎に入ってすぐに話しかけられた
話しかけてきたのは先程レイスにぶつかった兵士だ。

「話しって?」

「ま、そいつぁ聞いてからのお楽しみだ」

へへへ、と下品な笑いをしてルナを誘い続ける
怪しい気がするが、ルナは空いていた椅子に座り
頬杖をつきながら、聞いた。

「で?話しって何なの?」

「おう、これはちょっと日にちが前のほうなんだけどよ」

兵士はゆっくりとその話を語り始めた。





―サーショ裏道―
《見事に迷いましたね、フィール様》

スケイルは宥めるような慰めているような口調で喋った。
それを聞いている小柄で情けない顔をした男が
唸ったようなうめき声を出していた。

「うぅー・・・裏道で迷うなんて・・・」

今にも泣きそうな顔をしている。
いや、泣いているのか判断が付かない顔だ。

《仕方ありませんよ、とにかく人を探しましょう》

スケイルの話しかたはまるで保護者である。
聞いているフィールは息子と言った感じだ。

「そうですね・・・とりあえず歩きましょう」

フィールはそういうと自信がなさそうに
トボトボと奥に進んでいった。


歩いて数分がたった、さらに入り組んだ道をフィールは歩いている

「・・・なんか暗くなってきましたね・・・」

《街灯がなくなったからじゃありませんか?》

疲れきった顔で一人と一匹(?)はさらに進んでいった。
もう数分歩いていると不思議な現象が彼等に聞こえ始めた。

「こころなしか、人の声が聞こえますよ・・・」

それがだんだん大きくなっていく。
初めは断片的だったが、それが着実にしっかりと聞こえてきた。

「ヒィーヒッヒッヒッヒ」

現れたのは老婆だった。
不気味な笑いを上げ、フィールのほうを見ている。

「ヒィイイイイイイイイイイイイイイ!!」

瞬時に恐ろしいスピードで後ずさりをする。
・・・因みに彼は老婆の出現の瞬間腰が抜けているので
動きが変である。

《フィール様!!お、落ち着いてください!!》

おろおろとスケイルがフィールを落ち着かせる。
・・・老婆はその様子を楽しむかのように依然微笑を浮かべている

「お・・・お婆さん・・・あ、なたは?」

「ヒィッヒッヒ・・・あたしは『オーバ』、しがない占い師さ」

不気味な笑いでフィールを見下ろしている
老婆は、オーバというらしい。

「見たところ、あんた道に迷ってるね?」

「は、はひ!」

ビビリまくるフィール。
オーバはそのリアクションにまた笑う。

「ヒッヒッヒ、占いついでに道を教えてやるよ」

そういうと、懐から水晶玉を取り出し、その場に座り込んだ。
それから数秒ほど経つと、オーバはゆっくりと口を開いた。

「・・・・・・北東に行きな。
 何があるか知らんが、あんたの目的のための『何か』がある」

「な、なにか・・・・・とは?」

いきなり、勝手に占われてフィールは小首を傾げたが
オーバも首を横に振りながら言った。

「さぁねぇ?あたしは預言者じゃぁないし
 あんたの目的もわかんないからね・・・・・ただ」

「ただ?」

「あんたに教えられることは一つある」

フィールはきょとんとした顔でオーバを見た
『それ』が何か知りたい顔をした。

「出口はすぐそこだよ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

沈黙、一瞬だったが
フィールはオーバがさした方を向くと即座に立ち上がった。

「あ、ありがとうございました」

裏道の出口に向かい早歩きをして向かおうとする
オーバは最後に一言・・・・言った。

「またきな・・・・ヒィッヒッヒッヒ」

フィールは二度とこない、と心に誓ったのだった。

第三話 :異端者

「・・・・・・」

レイスは、特に何もしていなかった。
やっていることと言えば、剣の手入れぐらいである。

《手馴れているな・・・何処で覚えた?》

クロウが感心したように剣の手入れを見て言う
それを聞いて数秒ほど経ってからレイスは答えた。

「知らん。体がなぜか覚えてるんだ・・・」

《そ、そうか・・・・》

そしてまた、何事もないかのように手入れを再開する。

《(は、話が続かん・・・気まずい!)》

しかし、何か話そうにも話題がない。
さらに気まずい空気が続く・・・・・。

「・・・・・あの女」

《ん?どうかしたか?》

いきなり小声で喋りだすので何かと思ったが
彼の見ている方向を見てすぐに納得できた。

《外に行くようだが、武器も何も持っていないな》

クロウの言ったことで、自分の考えにも確信がいったのか
レイスはのそり、と腰を上げた。
そして、マントの土を払う仕草をしてから
女性の後をつけ始めた。


―サーショ北西の森―
「ギャイン!!」

犬の悲痛な断末魔が木漏れ日がさす森に響く。
これで何匹目だろうか、レイスは剣についている血を払い落とし
今日何回目かのため息をついた。

「ちっ・・・・さっきから邪魔だな」

苛立ちを隠せないように不機嫌そのものを出し
剣を鞘に押し込めた。

《あの女性も見失ってしまったしな》

クロウが地面に鼻をつけ臭いをかぎながら言う。
捜索犬か!ということは置いておこう。

「・・・・・・・・鳥?」

空を見上げながら呟く、上には木々が
上空を塞ぐように生い茂っている。

《どうした?》

「いや、さっきまで静かだったんだが・・・鳥の羽音が・・・」

言い終える前に何を見たのかクロウの
顔が強張り、声を荒げながら叫んだ。

《レイス!!あちらを見ろ!!》

レイスがクロウの声を上げた方向を見る
そこにいたのは、サーショの町で見た女性だった
彼女と対峙しているのは爬虫類・・・トカゲのような
体つきをした兵士である。トカゲの兵士は女性を睨みつけている
女性の方は顔は恐怖で蒼白となり、動けないのか座り込んでいる。

「ちぃ!!」

途端に女性の所へ走りこみ、女性の前へ飛び出る。
急に登場した一人の男に困惑げにトカゲも女性も見ていたが
トカゲの方はレイスの蹴りをくらいぶっ飛んで木にぶち当たった。

「おい!あんた!」

剣を抜きながら、後ろを向き女性に叫ぶ
女性は弾けたように顔を上げレイスのほうを見た。

「あ、あの・・・・」

「礼は後でいくらでも聞く!!逃げろ!!」

一喝され、女性は理解したのかのろのろと体を上げ
森の出口の方に去っていった。

残ったのはレイスとトカゲ・・・
レイスは木にぶち当たったトカゲの兵士に近づき
じっくりとその体を見た。

(鎧を着ている・・・それに武器も持っている・・・
 コイツは・・・一体・・・・・)

レイスは何を思ったのか、トカゲの頬を叩いた
クロウがレイスに叫ぶ。

《な、何をしているのだ!?早く止めを!!》

「るっせーな、少し聞きたいことがあんだよ」

それでもクロウは不満があるらしく暫らくぶつぶつ言っていたが
何を言っても聞かないことが分かったのか、何も言わなくなった。



少し時間が経つと、トカゲの兵士は目を開けた。

「う、う〜〜〜ん・・・・・」

ぼやけた視界に人の顔が映る。
若い『人間』の男の顔だ、そのトカゲは目をこすり
まず自分の身の回りを見た。
・・・・・・・縛られている。

「な、なんだこりゃああああ!?」

「気づいたか」

その男の顔がはっきりと見える
気を失う前のことを思い出し、声を大きく上げた。

「あ・・・・・アニキイイイイイイイイイイイ!!」

「あぁ!?」

縛っていたロープをぶちぎりトカゲは
その男、レイスに抱きついた。

「はな・・・・れ・・・やがれ!!」

即座にトカゲを蹴り飛ばす、トカゲは回転しながらぶっとび
背中から木にぶち当たった。

「きさまぁ・・・人を襲おうとして・・・
 何がいきなり兄貴だ、寝ぼけるのもいい加減にしやがれ」

怒りに満ちた顔で、剣をトカゲに向けた。
たちまち、硬直して動かなくなった。

「あ・・・・・あの女の人は?」

「あぁ!?なに言ってんだ?お前、人を襲うとしたんだろが」

トカゲは少しの間何か思案していたようだが
すぐに自分が何していたか思い出したようだ。

「あぁ、あれを襲っていると思ったでやんすね」

「は?」

レイスの顔がきょとんとなる。
だが、それをかまわずにトカゲは話を続けた。

「あの女の人が財布を落としたでやんすよ
 だからそれを拾って渡そうとしたら
 その人、おびえちゃって・・・」

どこからか、その『財布』を取り出し、レイスに渡して見せた。

「・・・・・・・・お前」

レイスは何か言いかけたが、トカゲの大声でそれは遮られた。

「あ・・・そうでやんす!!
 あっし兄貴に言うことがあったでやんす」

そのトカゲはレイスのほうを見ると
土下座をし始め、祈願するように言った。

「あっしを、兄貴の舎弟にしてくだせぇ!」

「はぁ・・・・・・?」







―北西の森:トカゲの小屋―
「で?どういうことなんだ?」

レイスが困惑した顔でトカゲに聞いた。
トカゲの方は、ニコニコ顔で答えた。

「だから、あっしを兄貴の舎弟にしてくださいと言ったでやんす」

どうやら、レイスの『弟子』のようなものにして欲しいらしい
トカゲはレイスに茶を出し、話を続けた。

「あっし、兄貴の強さに惚れたでやんす
トカゲ兵をいとも簡単に蹴り飛ばし、気絶させたんでやんすから」

そのトカゲ兵が自分であることを誇りであることのように
胸を張ってトカゲは言った。

ところでレイスは、混乱していた。
このトカゲの小屋に行くときにレイスは
自分の疑問をこのトカゲに話した。
返ってきた言葉は「あっしのような生物を竜人というでやんす」
で、それにこう続いた。

「竜人と人間は長年敵対心を抱いていたでやんす
 それで、最近では人間を滅ぼせとか、竜人を滅ぼせとか
 色々言っているんでやんす」

戦争も各地で起こり、壊滅した町も少なくないらしい
町を失ったものは隠れ住み、日々怯えている、とトカゲは言う。

「おい、お前・・・」

「何でやんすか兄貴」

「名前は何だ?」

そのトカゲは、ニコやかな笑顔で答えた。

「ザック・・・・・ザック=レイヴィトンでやんす」

この旅に・・・・・・役者が一人・・・・
舞台の上に立つ・・・・。






第四話:虚像眠りし洞窟


―サーショ酒場―
「・・・・で、一緒に旅することになったんだ?」

《奇怪な話ですねぇ》

少し疑惑めいた目で、ルナはレイスを見た。
彼の隣にいるのは、旅人が愛用するローブで全身を纏った
見るからに怪しい人物が座っている。

「あぁ、これから何が起こるか分からん旅だ
 人数がいるに越したことはない」

レイスが皆を見回して言う。

「そうですね、僕もそれには賛成です」

フィールが何度も頷きながらレイスとザックを見る
だが、レイスは眉をひそめると口をゆっくりと開いた。

「昼間っから酒をがぶ飲みする奴に言われてもな」

そういっている最中にも、フィールは酒をぐいぐいと飲んでいた
そして、これで何杯めか分からない酒をまた飲み始める。

「なに言ってるんですか?僕まだまだ飲めますよ?」

ケロッとした顔で、またお替りをしそれを一気に飲み干した。
それを見ている彼のトーテム『スケイル』は冷静な表情で
フィールに話を持ちかけた。

《フィール様、良いんですか?あのことを言わなくて》

「あ・・・・そうでしたね・・・」

今の今まで忘れていた・・・と言うよりは
思い出したくもない、といった顔でフィールは
あの占い師に聞いた話を話した。

「・・・・・・なるほど、何か分からない力か」

思案するレイスとは逆に、ルナは好奇心いっぱいの目を
しながら椅子から立ち上がった。

「面白そうじゃない?早速行ってみようよ」

「お前、トカゲの砦に行ってみるとか言ってなかったか?」

彼女が兵士から聞いた話を先程聞いた時
ルナは、乗り込むようなことを言っていた
それが今度は洞窟に行ってみる・・・だ
彼女の飽きっぽさにあきれながらレイスは自分に用意されていた
飲み物を飲みはじめた。

「なに言ってんのよ?あんたが今のままじゃ無理だって
 言ったじゃない?その洞窟行けば少しはましになるかもよ?」

ムッとした表情でレイスを睨みつけ、酒場の入り口に近き
フィールを呼んだ。

「いこ、なんか話すのが面倒になったわ・・・」

レイスを連れて行く気が全くないと言う意思表示をルナはした
しかし、レイスはそれを見てからかうかのような顔をし
ルナに挑発をかけた。

「悪いが、俺はいかないぞ?洞窟の中で泣き喚いても
 誰も助けてはくれないからな」

「あんたこそ、後で足手まといになっても知らないからね!!」

「べー」と舌を出す子供のような仕草をし
ルナは足早に街をでて、その『何か』がある洞窟に向かった。





―北東の洞窟―
「・・・・・魔物、多いね」

《そりゃ、人里離れた洞窟ですから》

剣を構えながら、寄ってくるコウモリを、野犬を
闇雲に振り回した剣で切り倒し進んでいたルナだったが。
フィールと途中ではぐれ野犬に追い回され、群れに会い
おいつめられてしまったのである。

「ガァアアアアア!!」

野犬の一匹が牙をむき、ルナに襲い掛かる。
ルナは、剣を突き立て横一線に野犬を斬る
野犬は鼻の辺りから血を噴出させ、その場に崩れ落ちた。

「グルルルル・・・・」

威嚇はしているが、自分たちの仲間が死んだとあれば
警戒はするのだろう、野犬たちが一歩下がる。
その隙を、見逃すはずがなかった。

《チャンスですよ!ルナさん》

フェザーが一点を集中して見ながら、ルナに合図を出した。

「やああああああああああああああ!!」

走りながらも、剣を振り回しその一点を走る抜ける
・・・フェザーを宿した彼女が追い付かれるはずもなく
野犬の群れは小さくなり、ついには見えなくなった。

「はぁはぁはぁ・・・・・・助かったみたいね」

野犬がいた方向を向きながら、安堵の表情を出した。
少し休もうと、洞窟の壁に座り込むと
彼女の走った方向とは逆の方から人影がちらついた。

「あ!ルナさん!!」

フィールだ、フィールはルナのいる所まで
駆け足で着くと、汗を拭きながら彼も安堵の表情を見せた。

《さぁ、合流も出来ましたし行きましょう!!》

フェザーが翼を広げながら嬉々とした表情で羽音を鳴らした。
そうですね、とフィールも言うとルナはすぐに立ち
洞窟の奥を目指た。





「・・・・・これが、力の正体?」

フェザーに聞くと、彼もその空間を見渡すと
首を傾げながらも、その『力』を見た。

《それ以外に何も見当たりませんねぇ?》

『それ』は光球だった、直径15〜20cm位の小さなものだが
この洞窟には異質すぎるものだった。

「とりあえず、触れてみれば分かりますよ」

フィールが、ニコリと笑いながら光球に手を差し出した
間があくこともなく、洞窟が真っ白な空間に染められた。
見覚えのある光景だった。

《リクレール様の部屋のようですが・・・》

トーテム『スケイル』が当惑げに、辺りを見ると
彼等も対面したことがある女性の姿が現れた。

「リクレールさんじゃない?あれ」

ルナが指差した方に、白い髪の女性が立っていた
目立つ角に、獣の耳をした『その』女性は
話しかける間もなく勝手に話し始めた。

《私はリクレール・・・この世界を統べる者
 貴方達が何者かは存じませんが
 勇気のある方たちなのでしょう》

《ワタクシ達のことを知らないみたいな言い方ですね?》

《私にはこの世界がどんな脅威にさらされているか
 知ることは出来ません、ですがこの闇を超えてきた
 貴方達に僅かですが力を授けましょう・・・・》

リクレールは静かに手を上げ、そのままの姿勢で話を続けた。

《目を閉じて、また開けたときには貴方達は少しだけ
 強くなっているでしょう・・・貴方達にトーテムの
 加護があらんことを・・・・)

その空間よりも強い光が目の前を走り
目の前が真っ暗になったかと思うと、白い空間は洞窟に戻っていた

「・・・・・・あれは一体」

フィールが呆然とした表情であったはずの空間を見たが
後にあきらめたのか、首を左右に振った。

《虚像だったのではないでしょうか・・・・・・》

スケイルも呆然とした表情だったが
今は知る術もない、彼等は洞窟の入り口に向かっていった。


そこには、何も残らずただ薄暗く狭い洞窟が
広がっているだけだった・・・・・。


第五話:理力の町の医者
―リーリル:クラート医院―
一人の男性が気力のない顔で座っている。
彼の名は『クラート=クレイトン』唯一の町医者である。
このところ、彼の病院(?)に客は来ない
いや、来るには来るのだが、あまり重病の患者は来ない
それもそのはず、このシルフェイドには『理力』が存在するからだ
多少の傷なら『治癒』、重症でも『完治』
病気や怪我の患者なんて、『ありえない』のだ
だから、彼の仕事は減る一方である。
最近では、彼の妻である『イシュテナ』も留守で
息子の『セシル』に至っては、話もなかなかしてくれない。

「(全く・・・なんかもう人生がいやになってきたよ)」

こんな事は毎日だ、だから最近では馴れてきたが
しかし、『暇』はどうしようもない
寝るか、散歩でもするかぐらいしかやることがないのだから。

「(今日はもう、閉めようかな・・・)」

などと考えていると、何かこちらに近づいてきた。

男である、一人は顔が判別できるが
もう一人は全身をマントで包んでいる不気味な人だ
それでも、久しぶりの患者かと思って
営業用のスマイルを全開にする。

「どうも、何の御用ですか?薬?それとも診察かな」

男が、薬の方に目をやり、「薬をくれ」と言う。
急いで薬棚から、風邪薬、睡眠薬、栄養剤・・・などを取り出す。
その中には万病薬ともいえる『エルークス』もある
『エルークス』は少し前、作り出した秘薬だ
厳選した、薬草などを使用しやっとのことで出来る代物である。
作ったときは、王様からも栄誉賞みたいな物も貰ったが
もう無くした。

「さ、どの薬かな?」

彼としては、患者や薬を買ってくれる客が来るだけで嬉しかった。
ここ最近孤独な生活をしてきたせいでもあるのだろう。
顔が判別できる男が口を開き、言う。

「エルークスの薬をくれ」

「はいはい、え〜っと1200シルバだけど?」

男が財布のような小袋を出し
1000シルバ紙幣と100シルバ硬貨を取り出す。
因みに、1シルバはある東の国で10円相当であり
1200シルバは軽く10000を超える高価なものだ。

「はいどうぞ、1日1回、二日も投与すれば
 ほとんど病気は完治するよ。」

「分かった・・・」

「あぁ、そうだ、また利用するときが来るかもしれないから
 君、名前を教えてくれないかい?」

あまり動揺ののない表情で男はクラートを見る
別に隠すようなことはしないだろうし
偽名でも名前が分かっていることに越したことはない。

「レイスだ、そしてこっちがザック」

マントで全身を隠した男を指差しながら言う
ザックという男は、礼をして「どうもでやんす」と言う
語尾があまりにも変だが、そういう町もあるのだろう、と
クラートは解釈した、あまり人の詮索を仕様とは思わない性格だ。

「レイスさんにザックさんね・・・
 じゃ、引き止めるのも悪いし、またいつか」

「・・・あぁ」

マントを翻し、ザックという男を引き連れて
レイスとザックはクラート医院を去った。
また一人となったクラートは、
彼等が何の病気にエルークスを使うのか
少しの間思案していたが、直に眠たくなってしまったのか
薬を棚に戻す作業の途中で、机に突っ伏して
昼寝を始めてしまった。





第六話:偽善者
―大陸北東:シイル方面―
「うわああああああああああああ!!」

夕方、午後16時半頃、空が少しずつ赤く染まる時間。
そんな時間にあまり広くない森に一つの叫び声が、響く。
・・・フィールは恐ろしいスピードで駆け抜けていた。

《フィール様!!左から攻撃が!!》

彼のトーテム、スケイルが目を点にしてフィールに話す。
当然、彼は回避の動作に入り間一髪で避ける。

「なんで!!こんなことにぃぃぃぃぃ!!」

彼は今大蛇に襲われている。
つい先程まで昼寝をしていたのにフィールが体を踏み
彼(彼女?)の安眠を邪魔してしまったのである。
その大蛇はもうほとんど傷だらけでスピードも少し遅め
だが気迫はおぞましく、普通の人間よりははるかに速い。

《隙がみめました!!今です、フィール様!!》

「ぃょおっし!!」

フィールが目を閉じ心を落ち着かせる
『集中』・・・・コンマ一つの時間で彼の手から火が集まる。
低級理力『火炎』だ。
低級といっても達人が使えばそこらの魔獣はひとたまりもない。
だがその炎は一瞬の間にさらに大きくなる、『昇華理力』である。

「我が手に宿れ!!豪炎の嵐!!昇華理力『炎嵐』!!」

詠唱が終わると共に火炎の嵐が大蛇を包み込み
大蛇の体を焼き焦がす。
嫌な臭いを出し、大蛇は叫び声を上げ倒れこんだ。

《フィール様、もう昇華理力をマスターしたんですか?》

「原理さえ分かれば後は簡単ですよ」

フィールは少し優越感に浸った顔を出す
しかし、その顔は低いうめき声によって弾けて消えた。

「ぎゅぅぅぅぅぅぅううう」

今、倒した大蛇がうめきながら悶え、立ち上がった
その様子がまだ敵対心があるのかと解釈させた。

《フィール様!!》

「・・・・・・」

フィールが大蛇に近づく、スケイルが心配そうな顔で
引きとめようとするが彼は聞かずに大蛇にさらに近づく。
大蛇が威嚇するように舌を出し震わせ、声を出す。

「・・・・・・」

フィールが手を前に出し、少しの間詠唱をする
長い集中をしているのだろう、フィールは微動だにしない。
数秒で集中は終わったのか、手が淡く光り始める。
フィールが目を開け、手をさらに前に出し
威嚇し続ける大蛇に手を当て・・・唱えた。




「『治癒』」

淡く光るその手から少し優しさをあらわすような
まぶしく、しかし暖かい光が大蛇を覆う。
間も置かない内に、大蛇の傷が泣くなった。

《ど、どうしたんですか!?止めを刺さないと!!》

スケイルが声を少し荒げる、怒りと言うには程遠いような
少し、優しい声だ、だが確実に怒りが混じっている。

「僕は、殺せないんですよ・・・『偽善者』ですから」

《え・・・・・・?》

スケイルは大蛇を見ながら、呆けた顔になる。
大蛇は万全な体で、何も使用とはせず
のそのそと、彼の前を後にした。

「洞窟でもみましたよね?僕『何も』殺してないんですよ」

《あ・・・・・》

スケイルが彼のいった言葉をきっかけにそのことを思い出す。
フィールは、洞窟内で野犬やコウモリを何十か『倒した』。
倒した後、熱心に何かしていたようだったが
スケイルは彼の背中で見えず、見ようともせず
それを見ていた、勿論金目になるものを探していると思ったから。
フィールが倒した相手に『冒険者の薬』や
『癒しの水』をつけているとは思いもせずに。

《フィール様・・・なぜ?》

「いいましたよね?僕は『偽善者』なんですよ・・・・・・
 自分のした事を正当化したいと思う、たちの悪い・・・ね」

その表情は少しは寂しく、行き場のない
孤独な、哀しい・・・表情だった。






―封印の民の村:シイル―
すこし静かで、だが、平和な村・・・それがシイルの村だ。
ここには『封印の民』という人々が住んでおり
『封印の扉』というのも彼等がつくったものだそうだ。
そんな極めて貴重な人材がいる村なのだが
それに加わる新たな『特殊能力者』が現れた。
それが、『預言者』・・・・・・。
シイルの村が活気で沸いたのはその預言者の出現からである。
その村に一人の少年が足を踏み入れた。

《ここには図書館もあるようですね!探究心がくすぐられます♪》

竜の形をしたフィールのトーテム、スケイルが
明らかにそのほうに興味を示し、フィールを誘う
フィール自身も読書は嫌いではないし、図書館ならばなにか
この世界の歴史についてや、災いのヒントも見つかるかもしれない
そう思い、入って見る。

「あの、すいませんが・・・」

本棚にいた女性に声をかける、本の整理でもしていたのだろうか
手には数冊の本が抱えられている。

「はいはい、なんですか?」

にこりと女性が笑いながらそれに応対をする。
あまり人が来なく珍しいのだろうか、女性の顔は満面だ。

「この世界の歴史についての本、ありませんか?
 それと、預言者にも会ってみたいんですが・・・」

「それなら早めに行ったよろしいですよ?
 ウリユちゃんとの面会は六時までですから」

「後、一時間か・・・・・」

腕を組み考える・・・・この図書館の閉館時間も六時まで
そうなると、どちらかを選ぶしかないのだが
女性は先に会ったほうがいいのだという。

「今日は特別に七時までなら開けといてあげますよ?
 本を勝手に持ち出したりしないなら、どうぞ遠慮なく」

「あ、ありがとうございます。じゃぁ、先に会ってみますよ」

お礼をいい図書館を後にし、預言者がいるという
雑貨屋『ユーミス堂』のドアを開く。
その中は、店らしく小物から薬までさまざまのものがあり
中には、ここでしか売られていない『理力の水』が置いてあった。
店主を呼ぼうとすると隣の部屋から話し声が聞こえた。

「えぇっと、明日はトニーさんが来て後は誰も来ないのね?」

「うん、トニーさんは結婚が取り消されないか聞きにくるみたい」

盗み聞きする気はなかったのだが
声の主達は誰もいないものと思ってか話し声は大きい
どうやら今日はもうフィール以外の人は来ないようだ。
・・・・話し声が続く。

「・・・・いつも悪いわね・・・ウリユ」

「ううん、だって私、目が見えないから
 お店のお手伝いも出来ないし、何か力になってあげたいもん」

「もう、このこったら・・・」

少しの間沈黙が続く、何をしているのか気になったのか
フィールは少し近づこうとしたが、急にドアが開いたので
素早く先程の位置に戻り、店のものを見るフリをした。

ドアから女性の姿が出てくる・・・・・
顔立ちがよく、キレイな女性だ、歳はまだ三十前半くらいだろうが
二十代後半と言われてもおかしくないくらいの女性だ。
その女性と目が合う、フィールが目をそらし
また『フリ』をはじめる。

「あ、いらっしゃいませー」

予想外の客に驚いたのか、声が少し上擦っている
フィールが今気づいたようなそぶりを見せて
とりあえず適当に理力の水を持って金を払う。

「・・・・・あの、予言をしにもらいに来たんですが]

「はぁ・・・では、あちらの部屋の方へ行ってください・・・」

女性が手をドアの方に差し出し、フィールをつれてドアを開ける
その物音に気づいたのか、ベットで寝ていた少女が体を上げた。
・・・・・・母親に似てキレイな少女だ。
歳は10代前半か後半に入ったばかりか・・・
どちらにしろ少女ではある。
その少女が虚ろな目で、フィール達の方を見ると
おびえた表情が顔に出て、母親に声をかけた。

「あ、あの・・・・お母さんこの人・・・だれ?」

目が見えなくとも気配を感じるのか
フィールのいる方を向いて言っている。

「いつも会う前からわかってるじゃない」

「わ、わからないの・・・・・」

「え・・・・・・」

女性が驚いた表情で少女と一緒にフィールを見た・・・。





第七話:預言者

「・・・・・・・」

少しの間互いに見合う形になる。
どちらも何も話そうとしない、出来ない。

「あの、いつもは分かってるんですよね?」

フィールが少し遠慮がちに言う
予言の能力が本当なら分かっているはずだ、そう思い聞いてみる。

「・・・うん、いつもは分かるんだけど」

声が上擦ってはいるが少しは警戒心を解いたらしい
フィールも一応は客なのであって、悪人ではない。
そして、預言者の少女が続ける。

「あの、名前・・・教えて」

「フィール、です」

「フィール・・・お兄さん?お姉さん?」

「フィールお兄さんですよね?」

自分の娘が話しているのを見てユーミスも話の中に入る
声で分かるのだと思うのだが、フィールの声は微妙に高い
少しのぶと目の女性に見えるのかもしれない。

「あ、あの・・・フィールお兄さん、お兄さんは旅人何でしょ?」

「うん、そうだよ・・・えーっと」

図書館の館員が名前を言っていた気がするのだが
フィールは聞き流しながら聞いていたので覚えていない
仕方なく、少女に聞いてみる。

「ウリユ、私はウリユ」

「ん、わかった、ウリユ・・・・ちゃん?」

「呼び捨てでいいよ、フィールお兄さん」

そんな風に少しずつ会話が弾み始める。
さっきの質問には「そうだよ」と答えておく
別にうそではない。

「フィールお兄さん旅のお話、してくれる?私聞きたい」

「いいよ、僕もそんなに忙しくないし」

ウリユが嬉しそうに「ありがとう」と言う
ユーミスは「いいんですか?」と不安げだが
旅の続きの心配をしてくれているのだろう

「では、お茶を持ってきますね」

ユーミスが立ち上がり、台所の方に出て行く
断る理由もなく、礼を言う。

「ありがとうございます、とじゃぁ話そうかな」

「うん!」

今日の出来事から話し始める、自分がなぜここに着たか
来るまでの過程はどうだったか、どんな魔物とであったか
他愛もない話だったが、ウリユはそれに相槌を打ち
時に笑い、時に驚き・・・・と実に表情豊かに聞いていた。

話が一区切りつき、部屋の時計の方に目をやる
午後六時、店の閉店時間だ
夕食の準備かなにかで戻ってきた。

「あの、時間の方、いいんですか?」

「え・・・・あぁ、そうでした、そろそろ行かないと」

慌てて立ち上がり、ユーミスに面会の礼をいい店を出ようとする

「じゃぁね、ウリユ」

「うん・・・・フィールお兄さん、明日も来てくれる?」

言われた言葉に驚き、少しウリユを見る
先程までの笑顔が薄くなり、問いかけるような顔をしている

「・・・・・・・・・もちろん!」

ニッと笑って今度こそ店の外にでる。
行き先はシイルの図書館、今日は特別に開けてもらっているので
少し早足で向かっていった。





第八話 :砦攻略

―リーリル方面 東の森 深夜0時頃―
一人の少女が草を掻き分けながら森の奥へと進む
夜も更け目が闇に慣れなければならない中、少しずつ進んでいく。
が、その闇が突如淡くなり、光となる。

「・・・・・・・・・!?」

少女、ルナの前にそこらの町ほどもあるような砦が現れる
多くのたいまつが掲げられ、そこだけ違和感があるようだ。

「・・・・予想通り!見張りはいないようね・・・」

にやりと笑い、それでも少し警戒しているのか
周りを見渡しいつでも戦える状態にしている。


入り口に着く。
中を見ると五人ほどのトカゲ人、『竜人』が立っている。
何か話し声が聞こえるが大事そうなことでもないようで
リーダー格と思われる赤いトカゲ兵の言葉に耳も貸さず
眠そうに、ダルそうにその話を聞くフリをしている。

《今ならチャンスかもしれませんよ・・・》

ルナのトーテム『フェザー』が耳元で囁くように言う
ルナが首を少し縦に振り、侵入しようとする。

キィ・・・・・・

ドアが少し開き大柄な青いトカゲが堂々と現れる。
防具や腰に提げている武器などを見ると豪華なものが多く
位の高さがよく分かる。
その後のトカゲたちの反応を見て確信することも出来た。

「あ、隊長!こんなお時間にお出かけですか?」

赤いトカゲが敬礼をし、それにつられて他のトカゲも敬礼をする。
青いトカゲ・・・隊長と呼ばれたトカゲが「うむ」と言う。

「・・・・砦の守りは『セタ』に任せた
 サポートをしっかりしてやってくれ」

「は・・・・はい!」

赤いトカゲが緊張した声で答える。
その後ゆっくりと青いトカゲが砦の入り口へと向かう。
思わず身を隠し、その場をやり過ごす。

数秒でその隠れた場所から顔を出す。
青いトカゲが完全に去ったのを確認し
そこから改めて入り口から侵入を図った。

「ん・・・・・・?」

赤いトカゲが入り口の方を目を凝らし見る。
人影だ、たいまつの火で顔がしっかりと認識できる
人影の正体は、「ニンゲン」、竜人の敵だ。

「し・・・・・侵入者ーーー!!」

赤いトカゲが叫ぶが近くのトカゲしか気づかなかった。
・・・・・砦の警備体制が低いのだろう。
隊長がいないのも一つ理由にありそうだ。

そのニンゲン・・・・勿論ルナのことだが
ルナが集まったトカゲ兵と向き合う。

「む〜・・・・・五人か〜」

ルナが剣をしっかりと握り敵を見渡しながら呟く
しかし、フェザーが勢いをつかせるように元気に叫ぶ。

《さぁ〜ちゃちゃっと片付けちゃいましょうよ!
 あの野犬の群れよりはずっとましですよ》

「まぁ・・・ね」

呟きが終わる、と同時に五人のうち四人がルナに斬りかかる。
が、それは空振りに終わり、ルナが四人の背後を取る。

「そんなスピードじゃフェザー宿してる私は捕まえられないよ」

少し呆れ気味の目をやりトカゲ兵を挑発する。
そして、ルナは剣を改めて構えトカゲに一気に斬りかかった!

「ぐぇ!!」

「ぐぁ!!」

ルナの振るった剣から流れ出すように血が飛び
トカゲたちを切り伏せる。

「軽い軽い!」

余裕な表情のルナの顔を見て赤いトカゲがいきなり声を発した。

「ば・・・・バカな!!ありえん」

「!!」

走り出した後に気づいたときは既に遅く
ルナの後方のドアが閉まり、『ガチャ』という鍵がかかる音がする

「あぁ、逃げられた・・・・」

《大丈夫ですよ、砦にいる限り逃げ切れませんから》

「ん、そうだね」

《・・・・それにしても、やりますねぇ全員殺しちゃうとは》

フェザーが軽い感じで言う、いや彼(?)なりに
暗く言ったつもりのだろうが聞くものには
元気よく言ってるとしか思えない。
・・・・フェザーの言った言葉に少し不服なのか
ルナの機嫌が悪そうになる。

「人聞きの悪い事言わないでよ・・・
 殺したんじゃなくて『倒した』、生きてるよ・・・多分」

だんだんと自信がなくなってきているのは気のせいかもしれないが
フェザーがトカゲ兵に近寄りよく見る・・・・
腹が動き、中にはうめき声を出しているものもある。
・・・・・・重症なのは違いないが。

《でも、瀕死ですよ?死んでるのと同じですって》

「・・・・・え?ホント?」

《えぇ、というよりも戦闘初心者なのに
 何で加減なんか出来るんですか?》

その質問には小首をかしげる
どうやら加減無しに思いっきり斬ったようで
剣をしきりに見る。
そして、重大な事実に気がついた

「・・・・・これ、ちょっとひびが入ってる・・・」

沈黙・・・・・・
砦の入り口で一人と一羽が見合う。
そして、口を開く。

《リクレール様・・・・不良品渡さないでぇぇぇ!!》

「斬っても手応えないわけのはこれのせい!?
 これじゃこれから心配だよ・・・・」

少し涙ぐみ、剣を闇雲に振り回す
街で直してもらおうと入り口を見ると
いつの間にか扉が閉まっていた。
周りには兵がいないが、閉じ込められたことには変わりない。

《し、仕方ありません・・・鍵を探しましょう》

「うぅ・・・・ひどいよ、あんまりだよ・・・」

そんなぼやきが砦で小さく、響いた。






―トカゲの砦一階、扉の裏側―
砦でのアクシデントの後、二階に上がり
一階の扉の裏側の方に回りこんだ。
・・・砦の一階は何者の音もせずに静粛を保っている。
壁は典型的な石ごしらえとなっている。

「・・・・・・結局カギはなかったね」

《それよりもトカゲの兵士はよく寝てましたね》

「・・・いや、カギの方が重要だよ?楽でいいじゃない」

緊張感のない話が続くが、それは曲がり角で終わる。

「うわぁ、敵さん相当怒ってるみたい・・・数が凄いよ」

トカゲの大群、とまでは行かないが小隊分はありそうな
人数がルナの前に立ちはだかっている。
先頭をきっているのは先程の赤いトカゲだ。
後ろに控えているのは緑色のトカゲ・・・・。
色によって階級が違うのかもしれない・・・。

「む・・・・てきだぁ!!突撃ー!」

考える暇はくれないらしく、一気に何人ものトカゲが襲い掛かる。

「さすがに、よけきれないかも・・・」

曇った表情で防御に徹し始める
ひびの入った『ショートブレイド』ではいささか不安だが
耐えてくれるのを祈りしかない。

《ルナさん!今です!》

「っ!」

フェザーの助言を聞き一気に横一線を放つ
一閃と言うよりは一打だが・・・・
運良く二人に当たり二人のトカゲが壁に吹っ飛ぶ。

「・・・・・そこ!」

今度は後方に回転し近くにいた三人を吹っ飛ばす。

《ナイスですよぉ〜ルナさん、後三人です!》

後は流れ作業のようなもので、一人・・・また一人と
壁にふっとばし、確実に敵の数を減らしていく。
・・・・最後の緑色のトカゲ兵が倒され後は赤トカゲだけになる。

「な・・・なんでこれだけの数を・・・・一人で・・・」

「・・・・・・・」

ゆっくりと近づく、赤トカゲは自分の死を
覚悟できないのか(剣にはひびが入ってるので死にはしないが)
恐怖がさらに上乗せされ、気絶してしまった。

「ありゃ・・・、気絶しちゃった」

《小心者なんですねぇ・・・》

「でも、勝ったことに変わりはないよね?」

《えぇ、ワタクシ達の勝利です♪》

と、二人で勝利に歓喜する。
だが、そんな勝利の喜びは長く続かないものだ。

「こ、これは・・・・」

「この数をたった一人で!?」

二つの驚きの混ざった声にルナが振り返る・・・
白衣のようなものを着たトカゲに『青い』トカゲもいる。
青いトカゲが指示を出す。

「・・・兵士を引かせろ!ここは私が受け持つ!」

それにすぐに対応しバタバタと言う音を立てながら
移動する音がいくつか聞こえる。
そして、音がやむ。

「・・・さぁ、勝負だ!ニンゲン!!」

「!!」

二人が同時に駆け出し、戦いが始まった・・・・。

第九話:勝利

キン・・・・キン・・・
誰もいない砦に金属音が響く。
人影は、二つ、先程から戦っているようだ。

「うっ・・・・・く・・・」

圧倒的に押されているのは人間の少女、ルナだ。
対して、押しているのは竜人セタである。

「どうしたニンゲン!!初めの威勢はどうなった!!」

「うる・・・さい!!」

苦し紛れに振るった剣が空を切り
セタがルナの頭上を取る!!
が、フェザーを宿したルナがそう簡単にやられはしない
剣が当たる瞬間回避に移る。

「あ・・・あぶない・・・」

≪ルナさん!次が来ますよ!≫

フェザーが言うと同時にセタの追撃の一撃がルナに迫る!
だが、また紙一重にかわす。

「・・・・今ので仕留められなかったか・・・」

思うように敵を仕留められず、焦りを感じるセタ。

「(しかし、引くわけにはいかない!!)」

セタが今までよりも集中した一撃を繰り出す!

「(速い!)」

避ける余裕を見せない攻撃にとっさに剣で防御をし
それを捌き、カウンターを繰り出す!

「な・・・がっ!!」

ルナの一撃が腹部に当たり鎧の隙間から血が滴り落ちる。
致命傷かどうかはまだ分からないが不利になることに変わりはない。
・・・苦痛に顔をゆがませながらも剣をしっかりと握る

「まだだ・・・まだ、いける!!」

セタが気迫を取り戻し、ルナにまた攻撃を開始する。

「はあああああああああああああ!!」

一つ一つに集中した連撃を繰り出し
少しずつルナに詰め寄っていく。

「くっ・・・!」

正確な一撃を防御せずに避けに徹するルナ。
相手が隙を見せるをじっと待ち、それを待つ。

「あああああああああああああ!!」

剣撃のスピードにさらにキレがかかり
気の緩みを出すことができなくなる。

「うっ・・・くっ・・・」

待つ、待ち続ける。
隙を全く見せないようだが、その時が・・・来た。
セタが大振りの攻撃を出した、出してしまった!

「っ!」

防御の体制から攻撃に移る!
狙いは頭!!

≪ダメです!いけません!!≫

静止に意味はない、もう剣は振り下ろされてしまったのだ。

「はあああああああ!!」

勝利の確信、相手の敗北、余裕、焦り・・・・・・
ほんの一瞬の気の緩みが脳裏に走った。

カシャン・・・・・ドスッ!!

「―――――――――カハッ」

腹部から血が激しく噴き出す。
右には、自分の剣が床に転がっている



目前には、セタの苦痛の顔が映った。



深々と刺さった剣が抜かれ
血がさらに勢いよく噴き出す。
立っていられずに床に倒れこむ。

「・・・・・私の勝ちだ、ニンゲン」

傷が痛むのか、苦痛の顔は変わらないが
勝利の笑みが少し浮かんでいる。

「はっ・・・・あ・・・・う」

何とか剣を掴もうとするルナの手に
セタの足がのしかかる。

「あ・・・・!」

「無駄なあがきはよせ・・・」

セタが剣を構えなおし、振り上げる。

「終わりだ!!!」

振り下ろそうとした瞬間・・・・
何かが切れる、音がした・・・・。



「・・・・・・?」

振り下ろそうとした状態でセタの動きがとまる
何があったのかと思うと、セタが剣を取り落とし苦しみ始めた。

「っ!!ああぁ・・・・」

腹部への一撃は致命傷だったようだ。
傷が開ききった為、先程の比ではない量の血が滴り落ちる。

「くそ・・・この・・・ままで終わると思うなよ、ニンゲン!」

恐ろしい痛みで気を失いそうになるが、倒れるわけにはいかない。
止めを刺す剣は、ルナの踏まれていない方の手に握られていた。
敗北と認めたくはないがゆっくりと後ずさりをしながら
セタは焦り、去っていった。
去る途中、鉄の音が後方でしたが、気にしている暇はなかった・・・。





「たす・・・・かったのかな?」

冒険者の薬を塗りながら、霞む視界で喋る。
フェザーは心配そうに傷をみながら答えた。

≪大丈夫でしょう・・・・多分≫

「・・・・・・多分って・・・て、ん?」

ルナの前方に鈍い光を放つ物体がある
まだ痛む腹を押さえながらそれに近づいていく。
物体は『鍵』だった。
それを見たと同時に当初の目的を思い出す。

「あ、そういえば私達、人探しに来たんだった」

≪・・・・・・探せますか?ルナさん≫

「ん、多分大丈夫」

≪多分ですか、心配ですねぇ・・・≫

ルナは苦笑いでそれを流した。







探し人はすぐに見つかった・・・・
エージス、その人は苦しそうに顔を歪ませ昏睡状態だった。

「この人重そうなんだけど・・・・運べるかな?」

自分が怪我人であることを自覚して
不安そうな顔をして言う。

≪やってみますか?≫

フェザーも不安そうな顔をして聞き返す。
ルナは、半ばあきらめ気味に決心しエージスを『引きずり』はじめた。



――――リーリル:クラート医院――――
「すいません・・・・」

ドンドン、と医院のドアを叩く音がする。
・・・・奇跡的に生還を果たしたルナである
隣には、傷だらけの中年の男が意識を失っている。
五分ほど立つと、眠そうな顔をした青年が顔を出した。

「はぁ〜い・・・・急患ですか・・・て、ええええ!!?」

青年、クラートは眠い顔をから一気に驚愕とした顔になり
その状況を掴むのに何秒かかかった。

五分後・・・・・・・

「いやぁ、びっくりしたよ・・・」

二人の手当てをし終えた後、意識のある
ルナに、笑いながら喋りかける。
ルナは、痛みに少し耐えながら、礼と侘びをいった。

「本当にこんな夜遅くにすみません」

「いやいや、人の病気や怪我を治したりするのが医者だからね」

医者と言うより、彼は薬師なのだが
あえて、『万能そうな』医者、という言い方をした。

「ところで、このエージスさんて人・・・ひどい昏睡状態なんだけど
 どうやら特別な毒を使っているようなんだ・・・」

「そうなんだ・・・・解毒はできないんですか?」

クラートは腕を組み、お手上げ、という感じで
首を横に振った。

「多分、毒を造った人なんかであればそういった
 薬草や薬を持ってると思うんだけど・・・ね」

「・・・・・・薬草ね」

≪竜人の人たちなら持ってるんじゃないでしょうかねぇ?≫

首を傾げながら、確信をした表情でフェザーが言う。
確かに彼のいう通りなのだろうが、どうやって手に入れるのかが
問題となる。

「ま、今日はゆっくりと休みなよ・・・・
 料金は気にしなくていいよ、この人の財布からくすねたから」

イタズラをした少年のような顔で笑いを抑えながら
クラートは自分の寝室へと入っていった。

「・・・・・・明日は、大陸の下の方にいって見よっか」

≪そうですねぇ・・・・何かあるかもしれませんしね」

「うん・・・・おやすみ」

そういって、ルナは眠りについた・・・・。


第十話:震え

「ギィッ!!」

低く短い断末魔が夜に響く。
・・・切り裂かれたコウモリが真っ二つに『割れ』
足で踏み潰される。

「ふん・・・・」

冷徹な瞳で踏み潰した足をどかし
血で赤く染まったブーツの底を地面で擦り落とす。

レイスは先程リーリルで調達したロングブレイドを鞘に収め
ため息混じりに多くの手荷物を持つ竜人、ザックを見た。

「いつまでじっとしている、行くぞ」

その様を呆けてみていたザックに一瞥すると
ザックは震え気味に「はい」と答え歩き始めたレイスを追った。

「それにしても、凄いでやんすねぇ」

荷物をレイスに渡しながら、先程の震えと反して
陽気な声でレイスに言う。

「あの程度倒せて当然だ・・・」

冷たい反応で返す。
もともと彼はこういう性格なのだが
ザックは『照れ』と認識している。

「・・・・・アニキ、聞きたいことがあるんでやんすが」

「なんだ?下らん質問だったら無視するぞ」

つまらなさそうに歩みを止めザックと歩幅をあわせる。
ザックはレイスの腰の辺りを見てロングブレイドの鞘ではない
『剣』を指差した。

「その剣、何で使わないんでやんすか?」

レイスが眉をひそめ、普段より曇った表情を出す。
聞かれたくない質問だったのかもしれない。
・・・が、レイスはすぐに表情を戻し答えた。

「これは・・・俺の、『命を奪うもの』だ」

「・・・????」

鞘から剣を出し、憎々しげにその剣を見た・・・
赤い、いや紅く刀身が染まった剣で、
長さはロングブレイドと同じくらいである。

「ふーむ・・・触っていいでやんすか」

聞いてみたがレイスは答えずじっと見つめたままだった。
それを了承したものと見てザックが剣に手を伸ばし
柄に触れようとした・・・時、ハッとレイスの顔がなった。

「触るな!!」

普段では出さないような荒々しい声を出し
慌てた様子で鞘に収め、速めのスピードで歩き始めた。

「サー・・・ショが見えてきた・・・い、くぞ!!」

何かに取り付かれたかのように汗をだし
走り出してしまった・・・ザックは急いで追うが
かなり速いのか追いつくことができず、かなり時間がかかった。






「・・・・・遅い」

ザックがサーショに着いたときにはあの焦りの顔もなく
いつもどおりの仏頂面の顔だった。

「アニキが速すぎるんですよ・・・」

その後に「一体どうしたんだ」と聞きたかったが
ザックはレイスのあの顔を思い出し口を噤んだ

「俺は用を済ませる・・・お前はどうする」

「あっしは・・・酒場で待ってるでやんす」

「分かった・・・なるべくすぐ戻る」

酒場で別れ、レイスは『用がある』場所に向かった





小さな民家がレイスの目の前にある。
そしてそれには似合わないような大きさのドアがあり
レイスは、奇妙な感じがして眉をひそめてしまった。

「・・・・・・・・・入るか」

ドアをこんこんと叩き、来客であることを示す。
・・・すぐにドアが開く。
顔を出したのは、レイスが今日の午前に(勘違いだったが)助けた
女性だ。

「あ・・・レイスさん、どうしたんですか?」

女性は少し驚いていたようだが、すぐにレイスを迎え入れた。

「こんな時間に、失礼だったな」

レイスが勧められた椅子に座り、非礼を詫びる
だが、女性の方は気にした様子もなく逆に嬉しそうな顔で
レイスに応対している。

女性・・・『シズナ』には、病にかかった『シン』という弟がいて
病の進行を抑えるために薬草を毎朝摘みに行っているそうだ。
そして、『エルークス』があれば病を治すことができのだが
如何せん高値で買うことができないのである。
・・・レイスがクラート医院に行ったのはそういう事だ。

「弟さんの方は、どうだ?」

短時間でそう容態が変わることはないのだろうが
話を進める為にはこの話のほうがいい。

「はい、特に危ないと言う感じは・・・・」

シズナのほうは、安心なのだろうが
他人が見ていると疑わしくなってしまうのはしかないだろう。

「あの、御用があったんですよね?どうかしたんですか?」

聞きたくて仕方なかった、と言う感じがよく伝わる。
・・・ここで『君に会いに来た』などというと
混乱するだろうが、そんな邪まなことできたわけではないので
レイスは荷物袋からリーリルで
調達した『エルークス』を取り出した。

「・・・・え??あの、これは・・・」

「エルークスだ、必要なのだろう?」

「え、あの・・・す、すみません。」

「なぜ謝る?俺は欲しいと思ったから買った、それだけだ」

シズナは、暫らくの間レイスの顔とエルークスを交互に見ていたが
そのスピードはゆっくりとなっていき、最後にはレイスの顔を直視してとまった。

「ありがとう、ございます」

「・・・・それでいいんだ、何も気にすることはないさ」

『さて』と言って、椅子から立ち上がり
大きなドアの前に立つ。

「あ、もう行くんですか?」

「あぁ、友人を待たせてるからな・・・またな」

ゆっくりとドアを開け、ゆっくりとドアを閉める。
・・・残ったのは、二人と、男が贈った薬だけだった。
マジカルパレス新入社員A
2007/06/15(金)
20:59:58 公開
■この作品の著作権はマジカルパレス新入社員Aさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのコメント
更新は遅いと思いますが
気長に、気長にお待ちください(笑)

この作品の感想をお寄せください。
初めまして。Tuneといいます。
リクレールのボケはやっぱり強いですね。何度か吹き出して笑いながら読んでました。
また、主人公3人のそれぞれに合ったイベント進行が行われていて、個性が読み取りやすいところが気に入りました。

やたらと短くなってしまいましたが失礼します。
続きも頑張ってください。
Name: Tune
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■2007-06-21 00:22
ID : d8l1MhGI.wI
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