狐狩ヨウコの休日 中編




「ヨーコ! シーナ! こんな所で会うなんてキグウね!」

「…………」

 昼食を取る為にハンバーガーショップに入ると
 思いもよらずリーザと出くわした。

 私達を見るなり大声で呼びかけながらぶんぶんと恥ずかしげも無く手を振ってきたその馬鹿に対して
 当然私は無関係のふりをしてこの店を出て行きたかったのだが。
 余計な事に隣にいたもう一人の馬鹿であるシイナが条件反射に手を振り替えしてしまった為
 どうにも無視するに出来ない状況になってしまった……やれやれ。


 仕方なく私達は彼女と相席することになったのだが
 そもそもこの外人は何で一人なのに店の中でバーガーを食べてるのだろうか。
 屋外でむしゃむしゃやってる方がよっぽど絵になるだろうに。

 あ、つい外人って言っちゃったけど
 差別用語になるから外国人選手って言わないといけないんだったわね、選手はいらないけど。


「え〜っと、こんな時何て言えばいいんだっけ、ゴキゲンウルワシュウ?」

「相変わらず日本語の使い方がなってないわねアンタは……」

「オフコース!」

「英語の使い方もなってないのね……」

「What? ヨーコ、もしかして元気無いのかしら?」

「それは変な外国人が目の前にいるからねきっと」

「シーナ、ヨーコがなんだか私に冷たいのよ」

「あ、あははは……」


 どうもこの金髪外国人と話をしていると疲れる。

 この馬鹿はたたでさえテンションが無駄に高いうえに
 ところどころで多々使われる間違った日本語をいちいち訂正してやらなければならないからだ。
 
 別に無視してやれば済む話なのだが
 このまま日本を誤解させたままで放置しておくのは一応警察の身としてどうにも忍びない。

 とは言っても何度訂正しても三日後にはまた間違える獣並みの馬鹿脳みそなので
 まあ結局どのみち意味はないんだけど……



「……で、アンタは平日の昼真からこんなところで何やってるの?」

「ええ、オシゴトが急にお休みになって――」

「もういい、大体分かった」

 つまりこいつも私達と同類か。
 シイナと一緒ならともかくリーザと行動が被るのは何故か嫌な感じだ。


「ヨーコ達はどうして一緒にいるの? デート?」

「でっ……!?」

「そんな訳無いでしょ」

「そ、そうだよ……べ、別にそんなんじゃないんだから……」

 動揺するな赤くなるなうろたえるなこの馬鹿に余計誤解を招くだろうが馬鹿。


「なら私とオナジアナノルイジアナなのね」

「ムジナよムジナ、無理に難しい日本語を使おうとしなくてもいいから」

「ああ、ソーリーなのよ。 それで、暇なら私とどこかへシケコマない?」

「し、シケコむって……」

「もういい、アンタは黙って食え」

「ヨーコは相変わらずCOOLなのね」

「アンタは相変わらず馬鹿なのね」

「えっと……二人とも相変わらずってことで……」

「シーナは相変わらずラブリーね」

「あ、あはは……ありがとう」

「いいから黙ってろと言っている」


 それからというもの、手に持ったビッグバーガーをバクバクかじっては
 これまたでかいサイズのコーラでグビグビ流し込んでいるリーザの食いっぷりを呆れつつ見ながら
 私は自分のナゲットをちびちびと口に運んだ。

 それにしてもこの馬鹿のよく食う事よく食う事……

 リーザの目の前のテーブルには、一体その身体の何処に入るのかと思える程
 大量のビッグサイズのバーガーが山積みになっていて
 そして彼女はそれを恥ずかしげも無く大口を開けてガツガツと休み無く食い続けている。
 見ているこっちも思わず食欲が失せるような気持ちのいい食いっぷりだ。 

 しかもやかましいまでに喋るわ喋るわで本当に鬱陶しい。
 今すぐそのでかい口をラップしてジップしてフリージングしてやりたいような
 そんな気分に駆られるのは私だけだろうか。


「……ということでヨーコはOKなの?」

「ん?」

 あ、ゴメン。
 アンタのそのやかましい口をどうやって固定してやろうかと考えてて全然聞いてなかった。
 
「せっかくだから、これから三人でどこかに遊びに行こうって話だよ」

「ああ、そういうことね……」

 まあ流れ的にそうなるだろうとは思ったんだけど。

「どうも気が乗らない話ね……」

「え〜……」

「その小動物みたいな目をやめい」

 シイナと一緒だと子守してる気分で疲れるし……

「一人より二人、二人よりも三人がいいのよ」

「アンタは喋るな」

 リーザと一緒だとやかましくて疲れる……


 とどのつまり、休みの日なのにどうしてこうも
 わざわざ疲れなければいけないのかと思うわけなんだけど……まあ暇してるよりはマシか。
 別にこの馬鹿二人と一緒にいたいって訳じゃないけど。

 
「……まあ、どうせ暇だからいいけどね、暇だから」

「…………」

「…………」


「あによ? 人の顔じっと見て……私の顔が何かについてるわけ?」

「…………」

「…………」





「ヨーコってツンデレなの?」←(ひそひそ)

「うん、わりとそんな感じだよ……」←(ひそひそ)


 オイコラ、聞こえてるぞ馬鹿コンビ。







 続きます……きっと

yasaka
2007/05/11(金)
19:02:26 公開
■この作品の著作権はyasakaさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのコメント
どうも、前後編にするはずが前中後編になってしまいました。
なんとなくここで区切りたかったもので……

シルノ本編と比べてお姉さんズの性格が若干違いますが
それぞれのキャラを立たせて動かしやすくする為に仕方が無かったもので。
お怒りになった方がいらっしゃったらスミマセン……

イメージ的には
元気なリーザさん、クールな狐狩さん、大人しいシイナさん
……となっております。

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